<2005年7月号>


第12回吟行記 6月16日(木)

参加者  聖子 節子 光子 由紀子

宮地嶽神社  

 6月4・5・6日 昇先生を囲んでの「祝賀会」「夏行」を終え、すぐに送られてきた句稿を改めて読み直す。初めて参加の聖子さん。心配をよそに、先生や千種さんら東京・千葉の方々と気負うことなく話をされていた。青葉若葉の金福寺や二尊院。夏行解散後の「哲学の道」や「お蕎麦や」騒動。句稿を手にいろいろなことが思い出される。

その余韻の中、気がつけば「あしや句会」の定例吟行句会の日が迫っている。今月は福岡方面なので節子さんに電話する。花菖蒲の「宮地嶽神社」を予定しているらしい。以前行ったことがあるが、菖蒲池や菖蒲田があっただろうかと思いながら、集合場所や集合時間を聞く。

当日JR福間駅に集合。節子さんの車が迎えに来てくれる。大宰府インターから高速を走り、今年から合併で「福津市」となった町に着く。下見してからの迎えに感謝!!
駅から5分くらいの所に神社はあるが、神社に隣接した駐車場までの狭い道をぶつかりもせず運転する。当たり前のことだが、曲がれば行き止まりではないかと思うほどの道だったので、駐車場に着いたときは節子さんの運転に皆感動!駐車場から少し歩き境内に入る。以前初詣にきた時は、まっすぐな参道を通り、松ヶ枝餅のお店を見ながら階段を登って本殿へと進んだので、神社の様子が随分違うように思える。だが目の前の楼門の奥には、確かにあの日本一の注連縄の本殿がある。やはり「宮地嶽神宮」だ。驚いたことに、本殿前の境内には所狭しと花菖蒲の鉢がぎっしりと整然と並べられている。まさしく花菖蒲の「宮地嶽神社」だ。

  

菖蒲に引き寄せられるように楼門をくぐる。花の盛りは少し過ぎたようだが、まだまだ十分見応えがある。まっすぐに色鮮やかに花を咲かせる菖蒲は、蒸し暑い梅雨の季節に涼風を呼ぶ花だ。江戸系の菖蒲らしく、花が葉先よりすっとぬきんでて咲き、細やかな色彩が目を楽しませくれる。

楼門に菖蒲の花の見えてきし     節子

大江戸の風情銘とし花菖蒲      聖子

節子さんが、光子さんを呼んでいる。「こんなん好いとっしゃろ」と指差している。ガラス張りのケースの中で獅子舞の獅子がお御籤を口にはさんでいる。機械仕掛けの獅子舞は、首の傾け方が実に上手く縁起がよさそう。さっそく皆でお御籤を引くことにする。四人が静かながらも歓声をあげて引くので、後ろに何人か立ち並ぶ。小学生らしい男の子の目は真剣だ。今年になって何回お御籤を引いただろう。当たるも八卦当たらぬも八卦。お御籤を結ぶのによさそうな木が境内の隅にある。大きな枝を広げ、よく見るとその枝に何本も支柱をしている。色あせた墨字の「寒緋桜」の立て札。もちろんお御籤は結べないが、二月から三月にかけての花の盛りはさぞ美しいだろう。

  

緋色の袴の巫女が菖蒲絵の土鈴を境内で売っている。本殿に手を合わせる。「宮地嶽神社」の創建は、約1600年遡るといわれ、神功皇后が、三韓出兵で自ら大陸に渡るとき当地に滞在され、裏の山の頂に祭壇を設け開運を祈願して船出したという。彼の地を「宮地」といい、彼の山を「宮地嶽」という。開運、商売繁盛の神として、毎年多くの参拝客が訪れる神社である。

日本一の大注連縄の他に、日本一の大鈴、日本一の大太鼓があるらしいが、長さ13.5m、重さ5tの注連縄だけで十分迫力がある。5tといえば、50`の人間が100人。三年に一度注連縄の取り替えがあるらしいが、注連縄を作っているところを見てみたいものだ。お賽銭箱の手前に籠があり、その中に「花菖蒲」「筍」「てるてる坊主」などの期間限定のお守りが売られている。あれこれ迷った末購入。

宮地嶽大注連縄に梅雨じめり    節子

菖蒲絵の期間限定願い鈴      由紀子

緋袴の巫女売る土鈴花菖蒲     光子

   

本殿の裏に回る。葉桜の下を抜けていくと「奥の宮八社めぐり」の立て札がたっている。左手に赤い鳥居と赤い献灯が奥へと立ち並び、異次元への入口のように奥へと続いている。パンフレットを読むと「七福神社」「稲荷神社」など奥の宮八社を一つ一つまわれば夢や願いが叶うとされ多くの人が訪れているという。200年以上前に日本最大の石室古墳が発見され、それを機に八つの社を祀り、五穀豊穣、愛、平和・・・などを祈るようになったという。今回はここを横目に右手の公園のような広場に向かう。

奥宮へ灯籠続く木下闇       光子

ゆるい坂になってる広場は芝生だったかどうか覚えていないが、青々として神社の奥とは思えない広がりだ。北側の斜面には紫陽花が一面に咲き、泰山木が白い花をつけている。そして見えてきたのは「菖蒲池」。見物客が三々五々菖蒲の花を楽しんでいる。カメラを向けている人もいる。池には木道が通され、花殻を摘む人が2-3人池の中に入っている。

菖蒲池定点観察カメラあり       聖子

花殻を摘む大袋菖蒲池         節子

無造作に長靴蝌蚪を踏みゆけり   光子

ざぶざぶと来て菖蒲池花柄摘む  由紀子

  

菖蒲池の向こう側には、日本の古い民家が建ち並んでいる。富山の合掌造り、福岡の鉤屋造り、熊本の二棟造りなど各地の伝統ある民家を移築した「民家村」だ。神社の中にどうしてという疑問は残るが、花菖蒲と民家の取り合わせは絵のように美しい。しばらく眺めた後、鴨のいる池を見ながら坂道を登っていく。鴨は餌のとり過ぎではないかと思うほどふっくらとしている。


軽鴨の餌百円と豆菓子に      光子

残り鴨一羽太りて禊池       由紀子

緑美しい径に節子さんと聖子さんが歌いだす。♪夏が来ーると思い出す・・・♪ 高音部に合わせて節子さんが低音部を歌う。歌を歌える人はいいなと思いながら口パクで合わせる。

ハミングもいつしか歌に夏あざみ 光子

緑陰の声軽やかに二重奏     由紀子

神社の縁を歩いているのだろう。坂下には菖蒲田が見える。径の脇に宮地嶽神社付属カルチャーセンター「文華学園」の看板を見つける。茶道、華道などいろいろな習い事ができるようで、英会話の教室もある。目の前の建物が「文華学園」なのかどうかわからない。入口に看板は掛かっていて小さいながら花壇には花が咲いていたが・・・。廃屋のように人の気配がない。場所を変えているのかも知れない。さらに先へ進むと、上から木々が覆いかぶさるような鬱蒼とした林の中に小さな池がある。今まで見たことのないような漆黒の水色。その水面を水馬が泳いでいる。それを過ぎると急に明るくなり、大きな鳥居と階段がある。なんとここは「宮地嶽神社」の正面の鳥居のある所だ。下方には人通りが少ないが門前町商店街があり、道がまっすぐ海へと下りている。

    

海を前背に夏山の宮地嶽     節子

夏海の香り満ち来る神社あり   聖子

階段を登っていく。両側には寄進されたものであろうか青銅の馬や牛の像がたっている。藤棚が見え、最初にくぐった楼門の前に辿り着く。神社の敷地のなんと広いこと。大願成就、四季折々の花、老鶯。よかとこでした。
昼食は海の見えるレストラン「大力」にて「あらかぶ定食」を注文。サーファーの集まるような店構えなので、和風の食事には嬉しい驚き。ここでそれぞれ句作する。句会は場所を変えようと少し離れた喫茶店に移動する。

お手本のように老鶯ホーホケキョ 節子

氷水みたすコップに海の色     聖子

お店の人の好意でテーブルも広く、ゆっくり句会ができ、今日一日の吟行句会をしめくくることができました。福間駅にて解散。よかとこでした。