<2005年2月号>


第7回  平成17年1月13日(木)

参加者  節子 聖子 光子 由紀子

  宗像大社 初詣  

 2005年の始まり。元旦より雪。若松では少し粉雪が舞うほどだったが、皿倉山などの山々は真っ白に雪化粧をしている。テレビで見る他の北九州地区も10−20センチの雪が積もっている。電車やバスのダイヤの乱れや、高速道路の通行止めなど波乱の幕開けとなるが、元朝の積雪は、格別な思いを抱かせる。俳句を詠む人ならずとも一面の銀世界を前に、これから始まる一年に思いをめぐらせ、どのような足跡をのこすのだろうかなどと、多かれ少なかれ思うのではなかろうか。

九州組の吟行句会は、昨年5月から始まり、6月の聖子さんの参加によって4人で行われるようになる。なりゆきで名づけた「あしや句会」だが、俳句を楽しむことをモットーに月1回集まっている。

初句会は「宗像大社へ初詣」。古くから海上安全・航海の神様と知られ、現在も交通安全の守護神として人々の崇敬を集めている大社に、四人揃って御参りをする。これからも楽しく「俳句の道」を進むことができればと思う。

1月13日 10時半すぎJR鹿児島線赤間駅に集合。赤間駅は快速が止まり、日に何本か特急電車も止まる駅なのだが、駅舎は小さく、駐車スペースがほとんどない。遅れて着くと駅前で待っている。すぐ宗像大社まで車を走らせる。赤間の市街地より釣川に沿って10分ほど行くと、こんもりとした森が見える。広い駐車場には、何台か観光バスやマイクロバスが止まっているが、松の内を過ぎた大社を詣でる人はそれほど多くない。

宗像大社は天照大神の三柱の御子神をおまつりしている。古事記や日本書記によると、神勅により三女神は北部九州から朝鮮半島にいたる古代海上交通の要衝である宗像の地に降りられ、あらゆる道に通じる最高神「道主貴」(みちぬしのむち)とたたえられている。遠く大陸に渡った遣唐使も、航海の安全を祈願しに必ず参拝したといわれる。弘法大師、菅原道真、山上憶良、阿部仲麻呂らの参拝記録が残っている。

   

宗像三神とは

田心姫神(たごりひめのかみ)・・・・・・・・沖津宮(第三宮)(沖ノ島)
湍津姫神(たぎつひめのかみ)・・・・・・・・中津宮(第二宮)(大島)
市杵島姫神(いちきしまひめのかみ)・・・・・辺津宮(第一宮)(宗像市)

この沖津宮、中津宮、辺津宮の三宮を総称して宗像大社という。

 

本殿までまっすぐ進み、お参りをする。いつもの初詣であれば、破魔矢やお守りを買って、おみくじを引いて帰るのであるが、今日は本殿の脇にある門を抜け、案内板に沿って「高宮」へと向かう。高い木々に覆われた緩い上り道を登っていく。途中小さな橋を渡ると、石の階段があり献灯が灯されている。かさかさと音がするので、林の中に目をやると雀が何羽かいる。

献灯の灯りほのかや初詣     光子

道の神祀る大社の冬木の芽    由紀子

奥宮へ続く林の青木の実     節子

寒雀林の中を歩きをり      聖子

原生林のような林の中、合わせて119段の石段を登ると、大社の一番奥に辿り着いたという気持ちにさせる神秘的な場所に着く。真正面に小さな社があり、これが「高宮」かと手を合わせる。なにげなく横をみると、一種異様ともいえる空間がそこにある。見た目に10−20メートル四方の空間に石が四角に並べてあり、中央に台がある。奥には地面より幾本も幹がでている木が生えており、注連縄がされている。立て札を読むと、宗像大神ご降臨の地とされる「高宮祭場」で、現在も古式にのっとってお祭りが行われている全国でも数少ない古式祭場らしい。聖地のような雰囲気に気後れしながら、階段を下りていく。

    

飛び立ちもせずに社の寒雀   光子

寒林を歩いて裏のお社へ    節子

「高宮」の坂を下りきった径から、案内板に従って「第二宮」「第三宮」へと向かう。このあたりは太古の時代より続いたお社らしく、巨木ばかりで、その中でも目を引く巨木には注連縄をしている。径沿いに「神木 相生の樫」という二本の木の幹から出た枝が一つにつながっている珍しい木がある。夫婦円満、恋愛成就のご神木らしい。「第二宮」「第三宮」の並ぶ杜に入っていく。ここは、沖の島にある沖津宮と大島にある中津宮の御分霊を祀っている。玉砂利の敷地に建つお社は、唯一神明造とかで、伊勢神宮の式年遷宮で払い下げられた材料で建てられたものだ。

初詣唯一神明造とや      節子

遷宮の古材の社注連飾     光子

  

径をはさんだ反対側には「神宝館」がある。入り口が遠く、今回は行かなかったが、ここには沖津宮のある沖の島で見つかった大和朝廷時代の鏡、金製の指輪、勾玉など多くの国宝が展示されている。約12万点にのぼる貴重な出土品から「海の正倉院」といわれる沖ノ島は、国の重要な祭祀の場所だったようだ。本殿へと戻る。始めに御参りした時には気づかなかったが、境内には「神木」と書かれた大きな楢の木が何本もの石柱に支えられて立っている。

神木の楢の冬芽を仰ぎみる   由紀子

注連飾大神木を仰ぎみて    光子

楢の葉は、宗像大社の御神紋にもなっている。本殿横の授与所でお神酒少々と昆布をいただく。そして「福みくじ」。それぞれの「吉」を持ち帰る。収穫の多かった大社をあとにして、「玄海ロイヤルホテル」へと向かう。車で海岸の方向へ10分くらい走る。どこにでも見られる田舎の風景の中に、13階建てのホテルがある。民家を抜けて広々としたホテルの入り口にはいる。駐車場の横にテニスコートが4面ある温泉付きのリゾートホテルである。近くにゴルフ場があり、ホテルの裏手には「さつき松原」という5キロほど続く松林と砂浜があり、神湊、鐘埼といった漁港もあるので、特に夏は海水浴客や釣り客などでにぎわうのであろう。前々日下見にここにやってきたが、冬の「さつき松原」は、「拉致」という言葉が浮かぶほどさみしい所だったので、松原を吟行するのを取りやめにする。

  

玄海ロイヤルホテルのロビーは広く、真正面に小振りだが金屏風が置かれ花が飾られている。共に飾られた餅花が、まだお正月の気分を残している。レストラン「四季」にて昼食。ガラス越しにプールのある庭が見える。昼食後、係りの人にドアを開けてもらい庭に出る。寒くどんよりした天気なので、庭には四人のみ。寒々しく噴水が上がっているが、洋風な庭は手入れが行き届き、芝の周りにはパンジーがたくさん植えられている。プールの向こうに教会がある。松林の方から鴉の鳴き声が聞こえてくるが、結婚式が催される時には、この庭に美しく着飾った若い男女が談笑するのだろう。

何呼んで心細げに寒鴉     聖子

雲間より鳴き交わす声寒鴉   節子

節子さんと教会に入ってみる。光子さんがすでに入っている。あとから聖子さんもくる。パイプオルガンの曲が流れる中、しばらくバージンロードの前に佇む。それぞれに思うことがあるのか、言葉数が少ない。

教会は冬すみれ咲く芝庭に   節子

餅花やロビーの奥に句会場   由紀子

ロビーにしばらく座り、句作。奥のティーラウンジにて句会。句会では、やや節子さんが低調だったが、結果はごらんの通り。だから面白い。赤間駅にて解散。寒い一日だったが、いつものようになごやかに終る。この一年、またお付き合い下さいね。