<2006年7月号>


第24回 平成18年6月8日(木)

参加者 聖子 節子 光子 真理子 由紀子

大村公園・新西海橋と嬉野温泉(長崎県・佐賀県)バスツアー

 6月の花といえば紫陽花に花菖蒲。宮地獄神社や夜宮公園の花菖蒲、高塔山の紫陽花、直方の「大内菖蒲園」などが浮かんでくる。吟行地は同じ場所でも行く度に違う顔があるので、よく知っている場所でもかまわないが、初めての場所の感動は捨て難い。吟行地をどこにしようかと思いあぐねていたところ、ふと目に留まったのが新聞広告のバスツアー。30万本の花菖蒲観賞と書いている。その他大勢の人との集団行動や時間制約などで、句会ができるだろうかという不安はあるものの、やってみなければわからないバスツアー吟行。皆にメールで賛否を問うと、「OK」の返事。さっそく申し込む。「新西海橋と露天風呂と三大(海老・生うに・渡り蟹)海鮮グルメ」と書かれたツアーの内容からみると、時間も価格も経済的だ。

6月8日8時45分博多駅筑紫口に集合、55分バス発車予定。光子・由紀子の北九州組は折尾駅に待ち合わせ、7時47分の特急に乗ろうと少し早めに折尾駅に着くが、事故による列車遅れの構内放送が繰り返されている。節子さんら参加者全員のチケットを持っているので一瞬ドキッとするが、下りの博多方面へは影響がなさそうだ。胸をなで下ろしながら特急に乗り込む。博多駅の集合場所では上り列車の遅れが影響し15分遅れで全員集合となる。ぽつりぽつりと雨粒がおちはじめる中、40名ほどの客を乗せたバスが発車する。座席は決められていて、私たちは一番後ろの席に一列に座る。最初の目的地は長崎県大村市の「大村公園」。九州・長崎自動車道を南下し大村インターより大村市へと入る。

  

「大村公園」は城跡(玖島城)を公園として整備したもので、石垣が当時のまま残っており、桜や躑躅、藤、菖蒲、石楠花など四季折々の花が楽しめるようになっている。ここでの所要時間は50分程。噴水のある池や葉桜の道を抜けると、外堀が花菖蒲で埋められている。一面の花菖蒲はちょうど見頃で、多くの観光客たちが庭内を散策している。江戸系、肥後系の花菖蒲が多く、伊勢系の花菖蒲は小さくわずかに咲いている。立て札を見てしか分からない種類だが、熊本や明治神宮御苑などから移植された株は、10万株30万本となって咲き誇っている。城跡と花菖蒲の取り合わせが美しい。

  

 波静かな大村湾に面し、湾内の島が霧のような雨にうすくなっている。節子さん、光子さんは階段を上って櫓台へと行く。まだゆっくりと眺めていたいが、集合時間になったのでバスの方へと戻る。堀に架かった橋の下に黒っぽい魚が群れている。「鯔(ぼら)」だという。ぽつりぽつりだった雨も傘をさすほどに降り出す。これから嬉野方面に向かい昼食。伊勢海老、生ウニ、渡り蟹の豪華な会席料理とパンフレットに書かれてはいるものの期待せずにいたが、海老、蟹は小さめながら、まあまあ美味しく生ウニはたっぷり。しばらく生ウニはいらないと思うくらい食べる。

   

 昼食後、嬉野温泉「神泉閣」の露天風呂へ入浴。ツアー客全員が一度に入ると大変だろうと、少し時間をずらすことにする。フロントに荷物を預けてロビーで休憩。珈琲を飲みながら、小さな滝のおちる池と木々の緑が美しい庭を見る。私たちが最後の入浴客のようで、この旅館自慢の庭園露天風呂に三人貸切状態で入る。ただし節子・聖子さんは早めに行動(入浴)。すぐにバスに乗り込み、次の目的地「新西海橋」へと向かう。

パンフレットに載っている花菖蒲・庭園露天風呂・新西海橋などの写真は見ていたけれど、大村(長崎県)・嬉野(佐賀県)・西海橋(長崎県)の地図が頭に入っていないので、どこをバスが走っているのかよくわからない。広がる青田や蓮田、自動車道からみる棚田、その向こうの海など、ワイワイ言いながら見たものの、「あちらがハウステンボスです」のガイドさんの声に、「さっきまで佐賀の嬉野いたのに今は長崎県、そういえばハウステンボスは大村湾に面していた」など頭の中は地名のみ浮かび、地図はぼんやりしている。長崎県全体の地図が描けない。

  
「針尾の無線塔」                       新西海橋  

雨は本降りとなり、新緑の山並みも海も茫々としてよく見えない。その中にうっすらと3本の高い煙突のようなものが見えてくる。「針尾の無線塔」。説明によると旧海軍の無線送信塔で、1941年ここから全連合艦隊に暗号電文(ニイタカヤマノボレ)が発信され、真珠湾攻撃が開始されたという。戦後は佐世保海上保安部の施設として使用されたが、現在は全く使われていないらしい。海が見えてくる。土産店「魚魚(とと)市場」に到着。バスから降りると、今通って来た赤い西海橋が見え、反対側に人道・車道二層の新西海橋が見える。新西海橋は今年の3月に開通したばかりという。車道は有料だが人道は無料で、希望者は歩いてみてくださいとのガイドさんの薦めもあり行くことにする。人道の中央部分には展望バルコニーがあり、床には下の渦潮が見えるように眺望窓が埋め込まれている。高所恐怖症の人は覗けないだろうと思うくらい遙か下に水面がある。大村湾の入口で、日本三大急流の一つであるこの西海橋の渦潮は有名であるが、降りしきる雨に渦がはっきりしない。先ほどの無線塔も灰色に霞んで見える。晴れていたら素晴しい眺望であろうが雨は止みそうにない。(この日北部九州は梅雨入り)

総工費一億円のトイレがあるというので入ってみる。トイレは綺麗なほうがいいが、所有者は誰だろう。お土産店を一回りする。「魚魚市場」には長崎港から直送されてくる活伊勢海老やサザエ・蟹などの魚介類、干物や蒲鉾などの加工品が所狭しと並べられている。味見しながらお土産を少し買う。バスに乗り込み、もう一軒お土産店に寄る。カステラの試食をしながら長崎県のお菓子や酒・焼酎を見てまわる。それぞれにお土産を買い帰路につく。博多駅には予定時間通り19時すぎに到着。近くのイタリア料理店にて夕食・句会。

はじめてのバスツアー吟行だったが、バスの中では常時ガイドさんがマイクで観光案内をするし、観光地ではいつも時間が気にかかる。どんな状況でも俳句をつくることができるといいが、もう少し集中できるほうがよいようだ。解散。

集合の時間気になる花菖蒲           節子

花がらを摘む菖蒲田に身を沈め        光子

さみだるる露天風呂あり人ひとり        聖子

西海の渦に降りこむ若葉雨          由紀子

わたり蟹縛られている生簀かな       真理子