吟行記

平成19年10月号】


第38回 平成19年9月13日(木)

 参加者 佳与子 節子 聖子 光子 真理子 由紀子

マリンワールド海の中道(福岡市東区)

今月の吟行地は水族館。水族館の中は季節感がないので俳句を作りにくいという話もでたが、格別残暑の厳しい中、快適に一日を過ごせる場所を優先し、博多湾に突き出ている国営海の中道海浜公園内にある水族館「マリンワールド海の中道」に決定。

 当日佳与子・光子・由紀子の北九州組は折尾駅にて集合。10時2分発の快速に乗り香椎駅にて乗り換え。上り下りを間違えないように駅員に確認してからJR香椎線(西戸崎行)の二両電車に乗り込む。電車内はまばらで外の景色がよく見える。和白駅あたりから博多湾が見え始め、穏やかな海と線路沿いのフェンスに絡む葛の花や出始めたススキの穂に、外は30度を越す暑さとはいえ初秋の小旅行の始まりを感じる。やがて電車は砂浜と松林の中を走り両側に海が見える。細く低い松を海風から守るためなのか、しっかりとした柵が幾重にも施され続いている。20分程で集合場所の「海の中道駅」に着く。そこは無人駅で切符は目安箱のような小さな箱に入れる。通称「うみなか」と呼ばれるこの公園は、以前子供達が小学生の頃何度か遊びに来たことがあるが、広大な敷地にプールや動物・花の広場、子供の広場などがあり、思いっきり楽しめる公園。その入口の「海の中道駅」は小さくカラフルで、まるでおもちゃの駅のようだ。先に着いていた節子さんや真理子さん・聖子さんと合流する。

よく揺れる西戸崎線秋の晴         節子

秋の潮香る無人の駅に待つ        節子

砂止めの柵幾重にも浜の秋        光子

秋日傘海辺の駅に降り立ちて       光子

ハイビスカス咲いて無人の海の駅  真理子

  

線路を跨いで桜の並木道を通り抜けると、大通りの向こうに白いホテルと波打った形の水族館の屋根が見える。食事の時間には少し早すぎるので、予約のみしてホテルの庭を散策する。ホテルは今年8月に名前が変わり、外装も内装も南国風に変わっている。パームツリーやハイビスカスなど南国の木々や花が植えられ、広い青芝の庭は博多湾に面している。福岡のリゾートホテルとしてロケーションは抜群で、当日対岸の博多の街は少し霞んではいるが、ヤフードームや福岡タワーが湾ごしに見える。波打ち際まで下りて行く。緩やかに打ち寄せる波にアオサが揺れている。横の桟橋にちょうど連絡船が着き乗客が降りてくる。対岸の博多港からの連絡船。帰りはこの船に乗って天神経由もありかなと思いつつ、ホテルのレストランに引き返す。

階段の際にまで寄せ秋の波      佳与子

新涼や改装なりしレストラン      佳与子

浜辺へとつづくホテルの芝青く    由紀子

桟橋に今船の着きいわし雲      由紀子

天高し機影静かに遠くなり        聖子

 昼食は目の前で揚げてくれる天婦羅。真理子さんの北信越ホトトギス大会に関連した三国の「森田愛子」や「虹」の話を聞きながら美味しく頂く。昼食後、ホテルの横にある水族館へと行く。皆節子さんの出題したクイズに正解したらしく割引価格で入場。幼稚園児らしい団体客もいたが、平日にもかかわらず若者達が結構来館している。混雑しているほどでもなく、閑散としているほどでもなく、程々の来場者で、迫力あるパノラマ大水槽や、「対馬暖流」を展示テーマに350種類二万点の海の生き物を、映像、音響機器、水中カメラなど豊かな展示方法で楽しく学べるようにしている三階建ての水族館を上へ下へと各々興味のある所へ見学。イルカやアシカのショーは博多湾を背景にして行われ歓声が聞こえてくる。

  

秋天の下真っ白な水族館         節子

秋の山はるかにイルカショーを待つ 真理子

秋天にイルカの高く丸く跳ね       光子

餌なる鰯落ち行くイルカショー       聖子

カブトガニ番号貼られ浜の秋      由紀子

ちょと動くひらめの目玉館涼し     佳与子

 句会は水族館一階のセルフサービスのカフェにて行う。真横にイルカショー用の水槽プールがあるので、イルカが勢いよく飛び込み泳ぎ回っているのが見られる。水族館の句会場として最適だ。連絡船に乗る時間はなくなったが、ゆっくり海の生き物を眺めるのは面白い。海の世界を満喫して外に出ると、少し涼しくなった風が吹き渡っている。余韻は残るが、帰りの電車の時間が迫っている。足早に駅に行くと2−3分して電車が入ってくる。一時間に2本の便数だからホッとしながら、節子さんらが収穫して持ってきてくれた唐辛子や茄子などを分け合う。皆すでに主婦の顔になり野菜を手にして香椎駅にて解散する。

実習の唐辛子とや輪に干して      光子