吟行記

平成19年12月号】


第40回 平成19年11月15日(木)

参加者 佳与子 節子 聖子  真理子 由紀子

住吉神社・楽水園(福岡市博多区)

先月の高見神社のお稚児さんを見た後ではあるが、句会定例日の第三木曜日が11月15日。迷うことなく11月の句会は「七五三」吟行することに決まる。今回は博多駅から歩いて10分程の「住吉神社」。この神社は約二千社あると言われる「住吉神社」の中で最も古いとされ、大阪、下関と並んで日本三大住吉のひとつである。神社仏閣の吟行が多くなるが、その土地の歴史が最もわかりやすく、祭礼など行事も多く句材も多い。
11月15日10時半に博多駅の「博多口」に集合。駅前の大通りを左方向に沿って歩く。「博多全日空ホテル」を通り過ぎると、こんもりと楠の木が枝を広げているのが見える。鳥居を潜ると「博多古図」の複製パネルが掲示されている。それを見ると1000年以上歴史のある神社で、「航海の神」として信仰を集めていたことがわかる。楠の大樹で覆われた広い境内は賑やかな博多駅近くであることを忘れさせる。
本殿前には園児たちが禰宜の見守る中、付き添いの先生から神社にお参りする作法の説明を受けながら列をなしてお参りしている。いつもはひっそりとしている境内には「七五三」らしく童謡が流れていて写真屋も暇そうにはしているが一式道具を置いている。何組か和装姿の親子がお参りしている。大太鼓が鳴らされご祈祷を受けている親子もいる。「七五三」に付き物の「千歳飴」を持っている子供がいない。美味しいお菓子がいつでも食べられる現在では、縁起物の「千歳飴」は形だけのものとなり実際に買う人が少なくなっているのは仕方ないことだろう。

 

千歳飴持たぬ子ばかり宮参り       由紀子

お賽銭にぎりしめをり七五三        真理子

祝詞にもあきし小欠伸七五三       佳与子

和食処「KOGA]でゆっくり昼食を済ませた後、朱塗りの橋「住吉橋」辺りを吟行する。橋からは博多の観光名所になっている「キャナルシティー」やその先に歓楽街中洲が見え、昔から博多の台所といわれている「柳橋連合市場」も近くにあるなど、雑然と博多の新旧の姿が混在している場所。晴れ渡った空が気持ちよい。

 

中洲へもいける川風冬ぬくし         節子

煤けたる常夜灯ある冬の川        由紀子

もう一度「住吉神社」に戻る。こちらの大鳥居が正面らしい。参道には露店が二つ寂しく並んでいる。境内の「一夜乃松」や稲荷神社などをぐるりと廻ってから、裏門から道を隔ててある「楽水園」へと向かう。ここは明治時代に建てられた博多商家の別荘を茶室棟として改築した美しい日本庭園。秀吉が博多の復興の際、兵火による焼石、焼瓦を粘土で固めて作った独特の「博多塀」といものがあるが、これを再現した塀で囲まれた園内は水琴窟や小滝のある池泉廻遊式庭園となっている。お抹茶をいただきながら薄紅葉や石蕗の花、まゆみの実やハクサンボクの赤い実をしばらく眺める。

    

つわぶきの花の黄猛々しきまでに     聖子

止め石に木の実落ち又木の実落ち    聖子

指先に少しざらつき椋落葉          聖子

今月の兼題が「蓮根掘る」だったので、福岡城址のお濠の枯れ蓮を見ようという話になった。思いがけない提案に大喜び。地下鉄に乗り「大濠公園駅」で降りると目の前に枯蓮が広がっている。びっしりと緑色の小さな水草が浮き、その上に落ちた枯蓮の実が乗っている。枯蓮のお濠を天神方面に向かって歩いていくと大手門。修復しているらしく工事のトラックや作業の男の人たちがいる。大通りの歩道から一段下がって散歩用の道があるので、そこをのんびり歩いたり石に腰掛けたりできる。桜の季節は濠がピンク色になるほどの名所だが、蓮の名所でもある。花の季節もいいが、桜紅葉や櫨紅葉を見ながらの枯蓮もまた良し。これだけで満足していたところ、私達に見せるかの如く、修復の作業中と思っていた男4人がお濠の中に入り、呼び名はわからないが、筏のような板舟を引きずりながら枯蓮を刈りだした。初めて見る光景に皆釘付けになり、刈る様子や積む様子など見る。

  

案外と浅きお濠や敗荷刈る        佳与子

刈られゆく敗荷夕日ひろがりて      佳与子

枯れ蓮の実の落ちて浮く濠端を      由紀子

枯蓮を刈る板船の傾きて            聖子

蓮刈りの枯れし花托をなげくれて     真理子

短日の蓮を刈る船かたむけて        真理子

枯蓮の刈り取り作業はかどらず        節子

刈りてなほ奥にはだかる枯蓮         節子

冬陽が傾き始め、すぐに薄暗くなるだろうが、なかなか作業ははかどらない。まだ見ていたいが句会や帰宅時間もあるのでお濠を後にする。「名島門」と呼ばれる御門を通り、急遽決めた大濠公園内のレストランで10句の句会。
公園内を犬と散歩する人、ジョギングする人、池に飛び交う鳥などを見ながらの句会場にも大満足。薄暗くなった公園を後にそれぞれに家路へと向かう。光子さんは仕事のため欠席。残念だったが、次回の忘年吟行句会を楽しみにしている。