吟行記

平成20年2月号】


第42回 平成20年1月10日(木)

参加者 佳与子 節子 光子 由紀子

十日恵比須神社(福岡市東区)

年の初めに景気のよい「大当たりー」の声を聞こうと去年と同じ「十日恵比須神社」に参詣した。JR鹿児島線の吉塚駅に10時集合。駅からまっすぐ歩くとすぐに「東公園」がある。広い公園の一番奥まった所に神社があるのだが、入口からあふれるように露天商が軒を連ねている。その数三百とも四百軒ともいわれる露店は神社に近づくほど縁起物が置かれている。すでに参詣を終え福笹を手にした人とすれ違う。10日は「正大祭」。駅に置いてあった「十日恵比須詣り」のパンフレットを見ると、福引は午前6時から深夜1時までとある。「初えびす」「宵えびす」「正大祭」「残りえびす」と4日間昼夜を問わず賑わう大祭は、名物の福引を始め、祈願祭や茶席、川柳大会、民踊などの諸行事、芸妓さんのかち詣りなどがあり商都博多の風物詩にもなっている。

  

大当り大当りの声初恵比寿        節子

参詣の静かに混める初恵比寿    由紀子

参道の人にせばまり初戎          光子

去年も「正大祭」の10日に参詣したのだが、その時「開運御座」といって、白丁(はくちょう)を着て、拝殿でお祓いを受けた後、直会膳(なおらひぜん)と福引の御座があることを知る。次回はこの「開運御座」にしようと皆で言い合っていたので、神社に着くとすぐに受付で初穂料を納め白丁を着て順番を待つ。参詣の列、福引や受付案内の声などで拝殿前は大賑わいであるが、拝殿の中に入ると案外静かで、本殿を前にすると神聖な気持ちになっていく。お祓いを受け、一年の開運、商売繁盛、家内安全、無病息災の御加護を仰ぐ祈願をし、お神酒と昆布するめの入った小さな袋を頂く。次に開運殿の大広間の席に着く。ここでは白木の折敷(おしき)にお茶菓子とお抹茶、蛤のお吸物に一口ナスが出され、持ち帰り用の箱ものが各人の前に置かれる。(鯛や紅白饅頭の形をした蒲鉾、十日恵比須飴、繁昌海苔、昆布するめなどが入っていた)

  

福引の声の祝詞に重なりて       光子

いよいよ名物の福引。お世話人の一人が籤箱を回し、もう一人が箱の中から籤棒を引く。「当りー」「大当りー」と声高々に縁起物を読み上げる。巫女さんたちが順番に引き当てた縁起物を配っていく。光子さんと由紀子は、もっと料理に精進せよとのことなのか、この一年食べることには事欠かないということなのか「大しゃもじ」が当り、節子さんは「おすがた」という桐箱に入った「えびす像」、佳与子さんは縁起物がたくさん付いている「大熊手」。佳与子さんの「大当りー」の声は一段と高かったような気がする。なごやかな御座の締めは「えびす手一本」の打ち入れ。「ヨー」という掛声とともに掌を上にあげて拍手すると何だか気持ちがいい。引き当てた縁起物や直会膳の持ち帰り用の縁起物に福笹を添えて御座を後にする。この「開運御座」は深夜0時まで続く。

佳与子さんの大熊手は大きすぎて持ってきた袋に入らない。背の高い節子さんが、すれ違う人の顔に当たらないように掲げ持って歩く。拝殿前の福引所では「二万五千人目の福ー」と声高らかに当たった人に何やら渡している。福引を引いた人の数をカウントしていたことに驚くが、福を引き当てた人のえびす顔を見るのもうれしい。

    

初恵比寿袋に入らぬ大当り       由紀子

引き当てし大福笹に人より来      佳与子

二万五千人目の福とや初恵比寿   佳与子

威勢よく十日えびすの手一本       節子

裏参道から昼食予定の「レガロ」に向かう。背広姿の男性たちが、大当りの熊手より二回りほど大きな熊手を抱え歩いている。予約のお祓いを受けた大熊手をこれから会社に飾るらしい。商売繁盛・繁盛!!

昼食を済ませ神社に戻る。人はさらに多くなっている。参詣の列は長く続き、福引の声も続いている。福笹や縁起物を手にしている人、これから参詣する人など公園内は賑わっている。露店の道から少し離れた元寇ゆかりの「亀山上皇」像の近くまで行く。像は階段のある小山に建てられているので、今通ってきた露店の並ぶ道や人がよく見える。前方に猿回しの口上が聞こえてきたので近づいてみる。猿曳の顔は猿に似ている。いつも一緒にいると似てくるものだろうか。長々と続く口上につまらなそうに横を見ている猿に侘しさを覚える。

  

猿曳の口上長し芝に待つ         光子

口上に佇つ曳猿の浮かぬ顔       節子

気の乗らぬままに曳猿宙返り      節子

去年と同様、目の前の県庁11階の展望室に上がり、「十日恵比須祭り」や博多の街をしばらく眺めてから喫茶室にて句会。座った席も去年と同じ。帰り際に「今母県庁の展望室。」とメールを送った息子が、五時すぎ8階の仕事場から展望室に来る。社宅でお世話になった頃と全く変わらないおば様方に囲まれ、照れながらもうれしい再会。元気パワーを皆からいただいてすぐに仕事場に戻る。今年一年の家内安全、無病息災を願い十日恵比寿祭りを後にする。


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