吟行記
【平成20年7月号】
 
 第47回 平成20年6月12日(木)
 参加者 佳与子 節子 聖子 由紀子
太宰府天満宮・光明禅寺 
 
  6月6−8日の琵琶湖夏行を終え、その余韻の残る12日太宰府天満宮を吟行する。今年は九州北部の梅雨入りは関東より遅く10日に梅雨入り。11日も一日中雨が降ったが、12日当日空を見上げれば曇。予報では次第に回復してくるというので、折畳傘をバッグに入れ現地に向かう。
 11時西鉄太宰府駅集合。駅前からすぐ続く参道はそこそこの人出で、名物の梅ヶ枝餅の店は忙しそうに餅を焼き上げている。何気なく上を見ると燕が巣を作っている。参道の両側は土産店が並んでいるのだが、よく見ると軒ごとに燕の巣がある。燕の子らし口嘴が見える。いつものように神牛を触り道真公の歌碑を見上げ、鳥居の前に立つ。日本最古という石鳥居には朝顔の蔓が這い登ろうとしている。心字池の太鼓橋を渡らずにすぐ菖蒲池へと向かう。紫陽花と大楠の枝が覆っている径を抜けると、明るい花菖蒲の池が広がっている。ここの菖蒲池はコンクリートの円形の筒にそれぞれ株を植え込んでいる。まだ盛りとは言えないが、大振りの紫や白の菖蒲が咲いている。花の名所では必ず見かける高齢者のカメラマン達が、ここにも三脚を構えて写している 。
 
    
 
 「紫は水に映らず花菖蒲  年尾」の句碑が池に張り出しているデッキの近くに建っている。その句碑の回りや花菖蒲の間を鯉がゆっくり泳ぎ、亀は首をだしたり甲羅を干したり、水澄ましもいる。昨日の雨に濁っている池のどこかから牛蛙が鳴いている。 
 
 顕彰碑句碑も数あり菖蒲池    聖子

結ばれしみくじ紫菖蒲池      節子
  
 
 
 菖蒲池の向こうは「曲水の庭」。ここは通常人が入らぬように柵をしているが、この庭や回りに植えられている梅の木には、それぞれに「献梅」の札が下げられている。
 「献梅」の札に「・・会」や個人名が書かれたものがある。今年の二月か三月だったか、天満宮に献梅予定のある男性を取材したテレビ番組を見た。それは「梅上げ」と呼ばれる太宰府小学校の同窓生を中心にした還暦行事を紹介するもので、男性はその参加者。大勢の還暦を迎えた同級生たちが集まり、献木する梅の木探しから始まり、当日は皆赤い法被を羽織って献梅の木を牛車に乗せて町を練り歩き、三味線や鳴り物付きで沿道の人に小餅を配る。参道の各店もお茶や酒などだして接待をする。そして境内に植えられた梅の前で記念撮影。いつ頃から始まったのかわからないが、テレビに映る男性の嬉しく誇らしい顔が印象的だった。
 どの梅の木にも思いがこもっているだろうが、実の摘まれているもの、落花しているもの、たわわに生っているものがあり、青梅の行方が気になる。「飛梅」の実は毎年巫女さんたちが拾い、その姿がニュースで放映されている。境内の梅は梅酒や梅干として販売されているというので、早咲き遅咲きの種類によって摘まれる時期が異なるのかもしれないなどと思いながら、菖蒲池、曲水の庭を後にする。 
 
献木の青梅あまた落花して     佳与子

たわわなる実や献梅の札下げて  由紀子

一木の実梅摘まれぬままに在り     聖子
 
 
 
 本殿にお参りした後、裏の梅林を通り抜け「お石茶屋」へと向かう。残念ながら定休日。手前の茶店にて昼食。何十人もの団体客が入り店内は満席状態だが、総ガラス張りの窓いっぱいに梅の青葉が広がり窮屈感がない。安くて美味しい食事に満足。外に出て、梅の青葉の下に置かれている床几に座る。梅の青葉の上に大楠の青葉が重なっている。 
 
梅青葉お石の茶屋は定休日    由紀子

太宰府の千年楠の緑蔭に     由紀子
 
 中国語、韓国語が飛び交っている天満宮を後にして光明禅寺へ向かう。大鳥居から脇道に入るとすぐに山門が見える。前庭の石庭、楓と苔生す緑の後庭は何度見ても美しい。しばらく座っている。次々に拝観者が入ってくるが、ざっと見て出て行く人もいる。多くの中国韓国観光者には禅寺の庭はどのように映るのだろうか。 
 
門前の大潦若葉影          佳与子

薫風や庭に光の石の文字     佳与子

裏山より風降りてくる花楓       節子

山の端の隅々までも梅雨の晴れ   聖子
 
    
 
 参道にある梅ヶ枝餅の店「かさの家」の茶房にて句会。参道に店を構えている店の梅ヶ枝餅はどこも美味しいが、ここはいつも行列ができている。京都風の土産店の奥に掘りごたつ風のテーブル席。静かな店内のガラス越しに庭の青葉が見える。美味しくて餅のお替り。それぞれにお土産用の梅ヶ枝餅を手に太宰府駅にて解散。光子さん、真理子さん欠席。 
 
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