吟行記 【平成21年2月号】

第５４回　平成21年1月15日（木）曇りのち晴れ

参加者　佳与子　節子　光子　真理子　由紀子

戸明神社のどんど焼きと若松北海岸　 （北九州若松区・遠賀郡芦屋町）

一月は新年の行事があちらこちらで行なわれている。句会日の１５日に何か行事はないかと調べると、近くの戸明神社で「どんど焼き」が行なわれると回覧板に書いている。さっそく神社に問い合わせると、神事が１０時から始まると言う。子供会や自治会主催のどんど焼きには参加したことがあるが、神事のあるどんど焼きは知らない。俄然興味がわき吟行地に決める。９時半折尾駅集合。車で神社に直行する。

氏子らしい人たちが二十人くらい集まっている。境内には注連縄が張られ、その中に正月のお飾りや破魔矢などが円錐形に高く積まれている。後から持ち込まれたお飾りは、入口の箱に入れるように指示される。社務所から二人の禰宜が出てきて神事の用意を始める。簡単な奉納台に酒、塩、水の三宝が置かれ、大きな蝋燭に火が灯される。玉串の奉納、祝詞が始まり、皆神妙な面持ちで頭を下げる。禰宜の一人が蝋燭を持ち上げ、積まれている古札やお飾りに火を移す。火は燻りやがてめらめらと広がり昇っていく。

簡単な神事ありけりどんど焼き　　　　　佳与子  どんど焼禰宜の祝詞に始まれり　　　　　由紀子 祝詞よむ禰宜親子らしどんど焼　　　　　真理子 御神火の静かに移るどんどかな　　　　　真理子

神事が終わると、氏子等はどんど焼きの回りを囲み、先が二手に分かれた狩股の木で、よく燃えるように掻き上げていく。その火の上に、待ち込まれて箱にいれていたお飾りなどをのせていく。火の勢いは強くなり、四方にめぐらした注連縄を揺らしながら高く舞い上がり、禰宜が神事に用いたお神酒を降り注いでいく。火の粉や灰があまり広くない境内に散り、どんどの押さえとして置かれていた大きな青竹が時折爆ぜる。平日で子供達のいないどんど焼きは、粛々として執り行なわれていく。藪椿などの木々に覆われた社には鳥の声がひびく。

かき上げる時に鈴の音どんどの火　　　　　　　節子 どんど焼ときに鈴の音鳴らせつつ　　　　　　　節子 火櫓を煽る山風どんど焼き　　　　　　　　　　佳与子 氏子等の狩股休みなき左義長　　　　　　　　真理子 組まれたる青竹太くどんど焼　　　　　　 　　　　節子 四方に張る注連を揺らしてどんどの火　　由紀子 結界の注連より高くどんどの火　　　　　　　佳与子 口笛で冬鳥の声教えくれ　　　　　　　　　　　真理子

この戸明神社本宮はこの辺りの神社の総社として崇敬されてきたと案内板に書かれている。この辺りには戸明神社があちこちにあるので不思議に思っていたが、ここが本宮で他は末社らしい。境内に記念写真用の看板があり、顔だけ入れれば大きな岩を持ち上げた格好になる。ここは日本神話の「天の岩戸開き」で岩戸を開いた天手力雄大神（あめのたぢからのおおかみ）と岩戸の前で祝詞を奏上された美声の持ち主の天児屋根大神（あめのこやねのおおかみ）をお祀りしており、開運の力神様として大相撲の力士やスポーツ選手もお参りに来るという。

まだ竹が爆ぜ、どんどの火が残ってはいるが小さくなってきたので、食事処の開店時間まで近くの若松北海岸まで車を走らせる。昼食は蜑住（あまずみ）にある「ポセシャルダン」。こんな所にフランス料理のお店があるなんてと思わせる畑に囲まれた小さな人形館のようなかわいいお店だ。県道沿いで裏手には小川が流れている。少し歩いてみるが寒い。だんだん晴れてきたので同じ寒さならと、海岸沿いの「マリンテラスあしや」まで行くことにする。 相変わらずひびき灘の風は強い。以前来た時は春一番の強風と雨で行けなかった崖下の遊歩道を歩こうとしたが、今回は工事中。展望台より芦屋の浜や洞山や遠くひびき灘を見渡す。真っ青な海と白波が身の切れるような風の中に美しい。ゆるやかなカーブとなって伸びる三里松原に向って、波しぶきは煙のようになびいている。

蜑住といふは土地の名北風強し　　　　真理子 岩礁に尖る白波風花す　　　　　　　　　　由紀子 群青の色を重ねて冬の海　　　　　　　　　　光子 基地近し機影旋回冬の暮れ　　　　　　　由紀子

芦屋の航空自衛隊の基地が三里松原に守られているかのように広がっている。飛行機の音を頭上に聞きながら「マリンテラスあしや」の建物に入り、冷えた体を温める。何かの会合がちょうど解散したようで出入りの人が多かったが、一階の休憩所の席が空き、１０句の句会。 帰りに海岸沿いに２−３年前にできた「とと市場」に寄って干物や野菜など買い物をして若松を後にする。若松の住人としては、何か手土産を持たせたような気分で折尾駅まで皆を送り届けた。

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