吟行記
【平成21年10月号】 
 
第62回 平成21年9月4日(金) 
 参加者 佳与子 節子 光子 真理子 由紀子
 
 到津の森公園(小倉北区)
 
  今年の夏は梅雨明けが遅く、それ以降三十度を越す猛暑日はあるにはあったが、年々記録続きの気温の上昇は一段落し、八月を過ぎた頃から朝夕涼しく感じるようになった。酷暑を覚悟していたが、比較的凌ぎやすい夏だったといえよう。天候に敏感な鳥や動物たちにとって、今年の夏はどうだったのだろうか。今月の吟行は「到津の森公園」。動物園の生き物たちは、亜熱帯や熱帯地方の動物が多いので、暑さは気にならないかもしれない。
 
  
 
 9月4日「到津の森公園」入口に10時半集合。バス停からエントランスのゆるやかな坂を上ると、佳与子さん、節子さんはすでに到着している。光子さんからは車を駐車場に止めて、こちらに向っていると連絡が入り、真理子さんからも八幡駅からバスに乗ったと連絡が入る。幾分涼しくなったとはいえ、日中の気温はまだ高い。二人とも汗を拭きながら到着。今回は正面の「南ゲート」から中に入る。さっそく「郷土の水辺」や「バードケージ」を抜けて「里のいきもの館」に入る。身近に棲む昆虫や爬虫類や両生類などが展示されていて、工作や講義ができるようになっている。シマヘビ、イモリ、カブトムシ、鈴虫などを間近にゆっくりみる。また、体感ジオラマコーナーがあり、生き物の生態をよく観察することができる。巨大なニシキヘビを見るより面白い。
 
  
 
 入口近くに戻って「樹冠の世界」という樹上生活のサルや鳥たちがいるジャングルを再現しているコーナーを、展望デッキを通って見学する。キバタンは、時折目玉を動かすのみで置物のようにじっとしている。遠吠えをするフクロテナガザルも一度長々と声をだしたのみでおとなしい。襟巻きにしたらよさそうな尾を持つ猿、美しい羽をもつ鳥たち、バナナのような黄色の觜をしたチョコボールの「キョロちゃん」のモデルになったらしい鳥もいる。
「林床の世界」コーナーには象やトラ。真理子さんらが買った餌をそっと差し出すと、象はのそりと動き上手に口に運ぶ。
 
象の眼に長きまつ毛の秋日濃し      真理子

象の鼻揺れて秋蝶ひらひらと          節子
 
   
 
  近くの園内レストランに入ると冷房が効いていてホッと一息つく。飲み物を注文し、持ってきたおにぎりやサンドイッチを頬張る。持ち込み禁止でもなさそうだが、少し気がひけるところもあって、募金箱に寄付金を入れ、レストランを出る。すぐ横にはプレイランドがあり、子供汽車やメリーゴーランドが二三組の親子を乗せて動いている。乗ってみると風に吹かれて気持ちよく、時間が短く感じられる。目の前に広がる芝生の大広場には、園児たちが遊んでいる。リュックを木の下に集め、思い思いに散らばって遊んでいる。やがて集合の笛がなり、園児たちは整列を始め、帰っていった。
 
園児らの去りし広場に群とんぼ      由紀子

目につかぬ園の動物秋暑し        佳与子
 
 
 
 広場の隅っこにある樽から煙のようなものが噴出している。近づくと熱中症対策用のミスト。園児たちが時折近づいては楽しそうにしていたはずだ。広場からは、しま馬やキリン、フラミンゴが見える。ぐるっと回って「ふれあい動物園」に向う。ロバや猿、ヤギ、レッサーパンダなど子供達に人気の動物たちが柵の中にいる。ロバはおとなしく体を洗ってもらっている。白ヤギ黒ヤギは岩山に上っているものもいる。猿山の猿は外で遊ばず、岩穴の中に潜むようにしている。外にいる猿も日陰を選んでじっとしている。
 
さわやかや若き園丁ロバ洗ふ       真理子

しま馬の親子首寄す木陰かな       由紀子

猿の目の冷茶ボトルに注がれて      佳与子
 
   
 
  少し日が傾き始め、そろそろ句会を考えねばならない。ゲートでもらった園内マップを見れば、エントランスに近い大通りに面した所に「子供ホール」があり、その二階に無料休憩所がある。行ってみることにする。「子供ホール」の手前の「郷土の森林」を抜ければ園内を一周したことになる。森の中は「ぽんぽこ庭」や「ムササビの森」「こもれびの径」や「森の音楽堂」等など楽しそうな名前がついている。小高い丘をゆっくり散策。タヌキが檻の中でうずくまっている。夜行性の動物だから邪魔をしないように通り過ぎる。坂を下りていくと野外音楽堂が見える。次の日は土曜日だからイベントがあるのかもしれない。舞台にはマイク一本が立っている。佳与子さん、光子さんは興味深々で舞台にあがってみる。音楽堂を見下ろす階段状の観客席は、楠だったか桜だったか忘れたが、大樹の枝で覆われ木漏れ日がやさしい。
 
こもれびは径の名なりし秋の草      光子

片蔭をたどりて森の音楽堂        真理子

露草や森の音楽堂も古り           光子

蝉時雨音楽堂は森の中            節子
 
  
 
 園の関係者がいるので「子供ホール」が使えるかどうか尋ねると、「ご自由にお使いください」という返事。冷房も入れてくれるという。三階建てのホールは団体専用ゲートにつながり広々としている。ここに遠足に来た時、集合場所や昼食場所に使う所だろう。大画面の「旭山動物園モニター」が放映されている。テーブルと椅子が並べられた広い休憩室で10句の句会。
「到津動物園」時代より「到津の森公園」は動物の数は少ないが、緑が多く大人のみで散策するのにも気持ちがよい。動物たちも残暑の午後をのんびりと過ごしている。影が長くなり風が涼しくなり始めた午後四時、園内で佳与子さんと別れ、三人は光子さんの車で八幡駅まで送ってもらい電車に乗る。
 
 
【現在の「八幡駅」】
 
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