吟行記
【平成22年3月号】 
 
第67回 平成22年2月10日(水) 
参加者 佳与子 節子 光子 由紀子 
白野江植物園(門司区) 
 
昨秋「白野江植物園」の藤袴の花に群れるアサギマダラを見た行った折、ここの楓の木や梅や桜の木の多さに驚き、紅葉や花の季節に訪れたいねと話して帰った。前回のメンバーに節子さんを加えてそれが実現した。
門司港駅10時集合。早めに着いた節子さんが改札口で手を振って迎えてくれる。構内でお弁当を購入し路線バスに乗り込む。朝から雨模様だが土砂降りでなければ雨もまた良しである。路線バスは街中を通り過ぎ、ゆるやかな坂を登っては下る。二十分程で「白野江二丁目」のバス停に着く。ここから住宅と公園を抜けるとすぐに植物園が見える。入口の階段に「冬ぼたん」の黄色の旗が何本も掲げられている。もう花季が終わっているかと思ったがまだ大丈夫のようだ。雨に濡れた石段を登っていくと、植物園らしい匂いがどこからともなく漂ってくる。 
 
  
 
入口の左手に藁苞がゆったりした間隔で立っている。藁苞の中に白や淡いピンク、黄色のぼたんがこぼれるように咲き、来園者は皆カメラを近寄せて撮っている。正面の蝋梅が満開で良い香りを放、枝垂梅がほつほつと花をつけている。園の左手から回ろうと歩きはじめると、そこにも冬ぼたんが花を開かせている。丈は高くはないが、藁苞からはみ出すほど大きな花もあれば、今にも散りそうな花もある。蕾を触ってみると、思っていた以上に固く、あでやかな花弁をぎっしり包んでいるようだ。ピンクの八分咲きの桜は「小福桜」、もう少しで開きそうな蕾をたくさんつけているのは「河津桜」。下の池の辺りは刈り込まれていて殺風景だが、池に動くものがいるかと近づいてみる。水草に何かの卵らしいものが半分隠れている。傘でつついてみる。持ち上げてみる。いつか見た蝌蚪の紐とは違う。大きいからウシガエルかもしれないと勝手に想像する。 
 
ほつほつと梅咲き初めて鳶舞ふて    佳与子

傘先で持ち上げてみる蝌蚪の紐     由紀子 
 

 
先に昼食を済ませてゆっくり園内を回ることにする。入口近くの休憩所に戻る。以前この白野江植物園は個人所有の公園で「四季の丘」と呼ばれていた。その個人の家がそのまま休憩所と管理室になっている。庭先の縁側から靴を脱いで畳の部屋にあがると写真愛好家による作品が展示している。プロによるものではないだろうが動植物の写真や山の風景は見事。他にも絵手紙などが階段入口に掲示されていて小さなギャラリーになっている。一階もゆったりしているが、佳与子さんが予約をいれておいたくれた二階の大部屋でゆっくり弁当を食べることにする。ポットや急須などお茶道具が用意され、ここからは入口付近も広い裏庭もよく見える。句会もできそうだが、まだ肝心の句が出来ていない。
庭園をまたゆっくり見て回ることにする。山を切り開いて造られたらしい庭は石段やゆるやかな坂道が続いている。臘梅の咲いているあたりから「寒桜」や「鹿児島紅梅」の名札をつけた花が山道を彩っている。椿の種類も多く、「太郎冠者」(タロウカジャ)という淡いピンクの椿や真っ赤な大椿が目を楽しませてくれる。落椿の上に時折吹く風で雨雫が落ちてくる。 
 
   
 
臘梅に歩をゆるめつつ上る坂      佳与子

掌にあまる一花の落椿         由紀子

雨かとも思ひし梅のしずくかな     佳与子 
 
枯れ茎で静まりかえっている睡蓮の池を通り抜け、「木洩れ日広場」から「桜広場」へ上っていく。苔生している坂道は朝方までの雨で濡れているので、傘を杖がわりに滑らないように注意深く歩く。桜広場の後ろは展望台のある山頂広場への登り口になっている。前方には海辺近くの町並みと周防灘が広がっている。曇っているので海と空の境がはっきり分からないが、ここからだけでも山に登った気分になる。広場を囲む高い木々に鳥たちの交わす啼き声が響き、水仙の香りが匂い立ってくる。菜の花畑も見えている。 
 

 
 早春の林に鳥の声満ちて        節子
 
枝の重なり合った桜は冬芽をたくさんつけている。満開の桜に多くの人が集まるだろうと思いつつまっすぐ下に向う。足元には福寿草が黄色の花を咲かせている。しっとりと雨に濡れた園内は、まだ春浅い感じそのままで好ましい。帰りのバスの時間まで少しあるので、一軒のみある茶店に立ち寄りぜんざいを注文する。温かさと甘さがこの日の天気にちょうど良い。
 
ぜんざいの甘さほどよき春時雨     由紀子 
 
  
 
バスに乗り門司港駅まで戻って来る。句会場を門司港ホテルのレストランと決めレトロ街へ入る。ホテル前の「旧大阪商船」のビルにお雛まつりのポスターが張ってあり、見学したことのある佳与子さんの薦めもあってビルの中に入ってみる。段飾りのお雛様も華やかだが、河豚の大きな提灯が門司ならではで面白い。
14時過ぎのレストランはお客が少なく、窓から海峡の見えるテーブル席に座る。風が強まり波立っている。停泊中の白い船には「春風号」と大きく書かれているが一年中同じ名前なのだろうか、跳ね橋はもうすぐ開くのだろうかなど外を見ながら句作する。10句の句会。 
 
門司港の海岸通り野水仙        節子 
 
  
 
ホテルを出ると雨が強くなっている。誰ともなく何か食べようかという話しになり即決。門司港名物「焼きカレー」の店が目の前にある。季節の牡蠣の入ったカレーが美味しい。暖まったところで雨の門司港駅へ向かい電車に乗り込み解散。
(今月光子さんは「夏潮」の福岡吟行会、東京の「夏潮新年句会」に出席し活躍。) 
 
   
 
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