吟行記
【平成22年11月号】 
 
第75回 平成22年10月1日(金)
 
参加者 節子 光子 由紀子
 
宗像大社・みあれ祭(福津市)
 
8月句会に神湊の料理旅館「魚屋本館」を利用した。その時、ロビーに貼っていた「みあれ祭」の写真やポスターに釘付けになり一度見学したいという話になった。宿の人に聞くと、「このロビーから一番よく見ることができます。目の前の海を何百隻もの魚船が集まり、とても勇壮なお祭りですよ」という。話がトントンと進み、その場で6人全員の宿泊予約。諸事情で当日3人となったが、念願の「みあれ祭」を見学することができた。 
 
      
 
宗像大社・・・天照大神の神勅によって降臨された三女神を祀る

  長女・・・沖津宮、沖ノ島(神湊より海上60kmの孤島)
  次女・・・中津宮、大島(神湊より海上8km)
  三女・・・辺津宮、通称宗像大社と呼ばれている総社。

この三宮を総称して「宗像大社」という。ほとんどの祭祀は総社の辺津宮で行なわれるが、秋季大祭では、沖津宮と中津宮の神を船で迎えに行き3日間神事を執り行う。「みあれ祭」とは、この神迎えの神事である。一年に一度三女の辺津宮の姫が、失礼のないように姉の沖津宮や中津宮の姫をお迎えする船を出させるのである。 
 

 
10月1日早朝、海岸沿いに建つ宿の窓のカーテンを開けると、まっ平らな穏やかな海が広がり、東の岬から続いているなだらかな山々に靄が立ちのぼっている。薄紫がかった山が明るくなり、やがて眩しい太陽が上りはじめる。
昨夜も月が煌々と海を照らしていた。目の前の海に、これから神輿を乗せた船が渡ると思うと、静けさも光も神々しく思える。 
 

 
岬山に月の上りし夜更けかな    光子

山襞の靄に朝日や秋祭      由紀子
 
朝食前に海岸を歩いてみる。散歩している地元のお婆さん、宿泊客らしい下駄履きの女性のグループやカメラを首から下げた男性が海辺を歩いている。ゴムボートで釣りをするために海に出ようとしている男性が話しかけてくる。みあれ祭のことを聞くと、この辺りがやっぱり一番間近で見物できるという。西側の神湊の港から迎えの船が大島へ向い、神輿を乗せた後、目の前の地島や東側の鐘崎港の浦々から集まる船と一緒にこの辺りを旋回し、神湊の港に戻って上陸する。他の船は、神輿船(御座船)が無事神湊へ入港するのを見て、自分の港へと戻っていくらしい。
海岸に出て見るもよし、宿のベランダから見るもよしなので、人の混み具合次第ということにして一旦宿に戻る。昨夜の宿泊客は少なかったが、玄関にはずらりと何々様御一行の札が並んでいる。祭り後の宿泊か昼食なのだろう。
朝食は品数が多く食べきれないが、「魚屋」名物の鯛茶漬けが美味しい。 
 
    
 
朝月に開始の花火浦祭       由紀子 
 
開始の花火が打ち上げられる。目の前の海岸はさほど混んではいないので潮風に吹かれながら見物することにする。
岩場に作られた小さな橋の辺りに陣取り開始を待つ。海に突き出した岩場に三脚を立てている老人もいる。後ろの宿を見ると、屋上にカメラを持っている人がずらりと並び、ロビーにも人が並んでいる。
歩いて行くには遠いが、西側の港辺りの方に大勢の人が集まっている。神事を見るには港の方がよかったようだ。迎えの船が防波堤から出て行き、御付きの船も次々に大島へ向っている。沖津宮の神輿は、前日に大島の中津宮へ入られているらしく、当日は一緒に大島から出発する。 
 

 

 
神島へ向ふ船団秋の潮       節子 
 
9時30分。いよいよ大島港から一斉に船が動きだす。神輿の乗った御座船(ござふね)を囲む沖合いの船団は、白い水平線のように帯をなし、地島の向こう側(沖側)を通り鐘崎港沖へと向う。取材のヘリコプターが4機上空を飛んでいる。陸から見る神湊ー大島ー地島ー鐘崎の視界180度の玄海灘は、五穀豊穣、海上安全を願う秋の大祭に相応しく晴れ上がり、爽やかな風が吹いている。大漁旗を掲げた漁船が次々に加わり、その数100隻を越す。約15キロのコースを一時間くらいかけてパレードする。 
 
  
 
御座船を囲む船団秋祭       由紀子

御座船を取り巻く漁船秋の潮    節子

エンジンの音の海鳴り浦祭     光子

まつり舟色とりどりの大漁旗    節子

波いよよ高くなりけり浦祭       節子 
 

 
750年前から続いている「みあれ祭」の海上パレードは、宗像七浦の漁船400−500隻が大漁旗や幟を掲げて参加し、その煙で空は真っ黒になる程で、エンジン音や花火、汽笛などが鳴り響いていたらしい。近年は漁師が減り、100隻くらいになったと地元の案内ボランティアが教えてくれる。
それでも船団が鐘崎港から向きを変えて、いよいよこちらに向って来ると迫力があり、壮大な絵巻のような光景に胸が高鳴る。白い幟を掲げた二隻の御座船と大漁旗の漁船がぐるぐると回る。想像以上に船のスピードは速く、ぶつからないかと見ている方がハラハラする。10−20分くらいだろうか。渦巻く海を見ていると時間が経つのも忘れる。やがて御座船は神湊に入港し、漁船もそれぞれ戻っていく。見物客も三々五々散り始め、かき混ぜたように高くなっていた波も元の静けさを取り戻している。
 
  
 
三柱の神輿渡りし秋の海      光子

御座船の去りし祭の浦静か     節子 
 
船から下ろされて神輿は、一旦港の傍の小高い山の「とん宮」に案内され、その後車で5キロ先の宗像大社(辺津宮)に移動し、三神が揃った後、秋の大祭が三日間行なわれる。
今回は海上パレードのみの見学だったが十分満足。早朝節子さんのご長男「てるお君」から電話が入り、今から小倉から自宅へ帰るというので、それなら途中下車して「魚屋本館」に来るようにということになった。一年に一度の一時間の「みあれ祭」に間に合うなんて何と幸運。一緒に「みあれ祭」を見物。終了後宿の送迎バスで、宗像の「道の駅」に寄り東郷駅にと戻る。近くの日本料理の店「史」にて昼食。句会は前回と同じ水出しコーヒー掛けかき氷の美味しい喫茶店にて行なう。かき氷は9月までのメニューだったが、一人分のみ出来るという。おばさん達の話をしっかり聞いて対応してくれる爽やかな「てるお君」にどうぞ!!
 
  
 
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