吟行記
【平成23年1月号】 
 
第77回吟行記 平成22年12月9日(木)
 参加者 佳与子 節子 光子 真理子 由紀子
百道浜、西南学院大学周辺(福岡市早良区) 
 
今年の忘年句会は全員集合にはならなかったが、福岡の副都心・西新をゆっくり散策できたようだ。佳与子さんの入院している病院が西新にあるので、佳与子さんを誘って、吟行できる人はその界隈を吟行し、句は吟行句はもちろん「もちより句」でも良しとして句会を計画。これならば皆参加しやすいだろうと自画自賛の計画だったが、私自身が皆と吟行出来ず、食事のみの参加となってしまった。今回皆の御選句をこの場所で作ったのではと勝手に推測しながら掲載。ご了承ください。 
 
    
【西南学院大学の正門とキャンパス】
 
西新にある母校「西南学院大学」のキャンパスを歩いたのは卒業以来。本館など変わっていないが、新しく建て替えられたチャペルや部室などが入っている「西南会館」[学術研究所」などの新館に目を見張り、特に「西南高校」跡に建てられた「大学院」「大学博物館」「西南コミュニティーセンター」などには年月が経ったことを実感する。「あれから40年・・・・変わったなー」の心境である。
隣にあった当時の西南高校は男子校で、本館建物は赤いレンガ造り。レンガの校舎に蔦が絡まり、まさにペギー葉山の「学生時代」の歌詞そのもので美しかった。平成に入り男女共学、中高一貫になってから校舎が移転したらしい。
高校跡地に建つ一見カフェらしい赤レンガの建物は学食で、その奥に大学院や法科大学院、大学博物館らが建つ。 
 
クリスマスツリー法科のロビーにも    真理子

大学の門にもクリスマスリース        光子

枯芝に大学博物館の影            節子

ステージはポインセチアで縁取られ    光子 
 
  
【キャンパス内の学食】
 
旧高校の蔦の絡まる赤レンガの本館が、耐震補強され「大学博物館」(創立者の宣教師C.K.ドージャー氏を記念してドージャー記念館とも呼ばれている)として残っている。パンフレットを見て驚いた。近江八幡で見学した洋館の設計者・ヴォーリズの設計なのである。1921年建立の3階建ての洋館は、現在福岡市の有形文化財になっている。
大学のキャンパス内の松も健在で、太く長い枝を伸ばしている。チャペルは新しくなっており、新旧相まってのキャンパスは懐かしくもあり、目新しくもあった。体育館の南側に「「元寇防塁」の遺跡が保存されている。学生の頃、すぐ近くを走る市電の電停「防塁前」で下り、毎日のように通っていたのに、草の茂る中にある小さな社しか記憶がない。このようにきれいに保存されたのはいつのことだろう。 
 
   
大学博物館とチャペル
 
キャンパスに残る防塁新松子    由紀子

黒松の脂の匂ひや漱石忌        光子

枯芝に松ぼっくりと群雀        佳与子

学内にきし献血車クリスマス    真理子

冬紅葉パイプオルガン聞こえ来る  光子 
 
  
【史蹟 元寇防塁の跡】
 
大学前の道を隔てて、名門進学校「修猷館高校」がある。前身は黒田藩の藩校で、ここから輩出された著名人は多い。ちなみに千種さんの母校でもある。
吟行当日の12月9日は「漱石忌」なのだが、「修猷館高校」と漱石は縁がある。当時旧制第五高等学校教授であった漱石が英語授業の視察で修猷館を訪れ隈本館長に面会しており、 隈本館長は、漱石の小説「坊つちやん」に出てくる数学教師・山嵐(堀田)のモデルとされている。
創立200年を記念して風格のある校舎は順次建て替えられ、私の記憶にある校舎とは全く様変わりしている。佳与子さんの病院は修猷館高校の正門前で、しばらく校舎を眺める。皆ここで待ち合わせしたようだ。佳与子さんの早い回復を祈る。 
 
  
修猷館高校の正門とキャンパス
 
年忘れ病院前で待ち合わす        節子

快方に向かひし病年忘れ          節子

お見舞いの句会となりぬ漱石忌    真理子

戻りてもひとりの師走病室に      真理子

午後九時のノックはナース冬の星  佳与子 
 
大学裏の大通りから海側は埋立地を開発し、ドームや福岡タワー、領事館などが建ち並ぶ。大学周辺や修猷館高校前の「脇山口」の通りから一筋中に入ると、まだまだ昔からのリヤカー部隊など庶民の街の顔が残っている。糸島方面から新鮮な野菜や魚貝類をリヤカーに積んで通りで売っている。学生向けの洒落た店もあれば、小商いの菓子屋や総菜屋などが軒を連ねる。 
 

【西新の商店街】
 
西新にリヤカー部隊年の市     佳与子 
 
食事処は「ヒルトン福岡シーホークホテル」。ヤフードームの横に建つホテルは、バブル絶頂の頃ダイエーがドームと対のようにして建てたホテル。その後斜陽のダイエーが手離し、日航が再建に入るも、今はヒルトン系列に入っている。利用する側としてはサービスが向上すれば有難い。
横を流れる樋井川の周辺は「よかトピア」通りから緑道として整備されている。百道浜の住宅、目を引くハイアットホテル、「九州医療センター」前のモニュメントや歩行者専用橋などを見ながら「シーホークホテル」に急ぐ。ホテルロビーにクリスマスツリーが高々と飾られている。
 
  
ヒルトン福岡シーホークホテル
 
冬の日の届き始めしビル谷間       節子

鴨に餌撒く人に鳩群がりて         節子

大聖樹皆健康で仰ぎたし         由紀子

短日のラッシュ見下ろすブッフェかな 由紀子
 
このホテルには後日、嫁、孫と一緒に宿泊し、近くの「こども病院」で検査を受ける。二度の検査の結果「心配ないでしょう」という医師の言葉に胸をなで下ろす。また新しい年が始まる。皆の健康を願うばかりである。 
 
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