吟行記
【平成23年11月号】 
 
第87回 平成23年10月13(木)、22日(土)
参加者 節子 光子 由紀子
博多秋博(福岡市博多区) 
 
 
【博多駅】
 
今年も「博多秋博」が開催された。これは博多地区の企業と地域が連携し、にぎわいのある博多のまちづくりを支援する企画で、10月1日から11月15日にかけて、多彩なイベントが行なわれている。たとえば櫛田神社の「博多おくんち」「中洲まつり」「博多ハロウィン仮装パレード」「東長寺のジャズコンサート」「承天寺のピアノコンサート」「灯明ウォッチング」などである。
福岡市全体で見れば、人の流れは中央区の天神界隈に集中し、博多地区が賑わいを見せるのは主に夏の山笠期間で、キャナルや博多座など点と点の動きが主流だったが、この秋祭りは、規模も少しずつ大きくなり、認知度も増してきている。特に今年の三月に「JR博多シティ」が開業してから、博多駅一帯に人が集まり始めているので、これを機に博多商人の町・博多地区の活性化が期待されている。 
 

【承天寺】
 
10月の吟行は、博多地区の神社巡りと、まだ見たことのない「灯明ウォッチング」に決定。
まず10月13日は昼間の神社巡り。博多駅に10時すぎに集合。博多阪急や東急ハンズなどの入った「博多シティ」前の広場から、さっそく長東寺前を過ぎ、御供所町の寺へと向う。ここは何度来ても静かで、昔の博多が少し残っている。路地には長屋のような家が連なり、玄関に「山笠総代」など山笠に係わる役職名の札が掛かってる。
山笠所縁の承天寺や広い聖福寺の境内には人影はなく、茂った楠の巨木から烏やヒヨドリの声が響く。寺の長い塀に沿って歩くと、どこからか剪定の音がする。寺の多い御供所町に、それぞれ松手入れの職人が入り、黙々と作業をしている。 
 
  
【承天寺 2】
 
寺町の寺それぞれの松手入れ      由紀子

軽トラを寺に乗り入れ松手入れ     由紀子

門内に松の手入れの鋏音         由紀子
 

【寺町の通り】
 
承天寺境内は市道によって二つに分かれているが、山門などある南西の境内の松は伸び放題で、今から手入れするのか工事車輌が横付けされている。本堂のある北東の境内は菩提樹の実が少し散らばっているくらいで、方丈の庭は美しく掃かれている。庫裏前の大甕の蓮は枯れたままになっているが、甕の水にその姿を写し、澄んだ水に水草が浮いている。禅寺らしい風情に暫く佇む。 
 
方丈の庭に菩提樹実をつけて      節子

敗荷となりし大甕写経堂        由紀子
 
昼食は光子さんが探した博多町屋を改装した小さな古民家の二階で頂く。狭い急階段を上ると畳の部屋に4−5席のテーブルが置かれている。白壁に黒い柱がアクセントの店内は、寺巡り後の休息に相応しいゆったりとした雰囲気だ。昼食後、また御供所町界隈を散策し、博多駅近くの珈琲店にて句会。 
 
   
【民家と食事処】
 
10月22日の「灯明ウォッチング」は、この辺りで約三百年継承されている「千灯明祭」にちなんだもので、博多の秋の風物詩になっているらしい。「灯明ウォッチング」も第17回となっているので、こちらが知らなかっただけのようだ。ネットでみる灯明の地上絵に期待感が募り、我らの常宿になりつつある「鹿島本館」に予約を入れる。
当日予定の17時に遅れたものの、無事鹿島本館にて三人集合。あいにく雨のち曇りの天気で、何時降りだすかもしれない黒い雲に若干不安を覚えながら外へ出る。
近くの櫛田神社には、すでに大勢の人が出入りしている。境内には和紙の筒に灯明が揺らめき、山笠の清道旗の立つ広場には、灯明で「銀河鉄道の夜」が描かれている。二階から見る灯明の地上絵はまさに幻想的。 
 

【櫛田神社境内の地上絵】
 
近くの「冷泉公園」は若者や家族連れでごった返している。ドイツのビールや民族音楽などを楽しむことができるイベントのようだ。奥にはメリーゴーランドまで動いている。テントの中でピザを食べていると、土砂降りの雨。小降りになったところで、寺町の灯明を見ようと御供所町まで歩いてみるが、静まり返っっている。灯明は夕方の雨で片付けられたらしい。博多駅から宿までの大通りの歩道に置かれた灯明は、ビニールで囲って灯っていたので、少しの雨でも開催されるかもと少し期待したが、街路灯のみ辺りを照らしている。近くの高校の校庭を使って大規模な地上絵が灯明で描かれることになっていたので残念だが、灯明に雨では仕方ない。
御供所町から大通りの東長寺に節子さんの勧めで寄ると、本堂で「山鹿灯籠踊り」が始まろうとしている。11人の踊り子が独特の紙の灯籠を被り「よへほ よへほ」と踊る。思いがけない踊り見物となったが、雨の中を歩いた体に程好い休息。
 

【山鹿灯篭踊り】
 
秋燈に十一人の踊り人       節子

本堂に灯籠踊り秋祭        由紀子

本堂に雨宿りして見る踊り     節子

描かれしDo For Japan秋灯    光子
 
 宿近くまで戻り、レストラン「伊nokura]で遅めの夕食。美味しいイタリアンをご夫婦で作っている。小さな和風の入口で店内が見えないので、最初は入りにくいが、生パスタは絶品。宿にて句会。

雨で灯明会場の半分しか見ることはできなかったが、櫛田神社の灯明地上絵や山鹿灯籠踊りは、泊まりで見る価値のあるものだった。毎年行なわれるようなので、今度はお寺でのコンサートなども考えている。
 
   
【夜の寺町と朝の櫛田神社】
 
2011Top   Home