吟行記
【平成24年3月号】 
 
第91回 平成24年2月3日(金)、8日(水)
参加者 節子 光子 由紀子
節分祭と針供養(福岡市博多区・中央区)
  
古くから行われている神事が面白い。1月の「鷽替え」や「鬼すべ」に続き、2月は恒例のようになっている「節分祭」がある。どこでどういう話になったか覚えていないが、光子さんが3日の金曜日に休みがとれ、今年も節分祭に参加することになった。
2月3日12時に博多駅集合。光子さん、節子さんと合流して東長寺に向かう。今年は寒い日が続き、この日も雪がちらつく。防寒着に身を包み、争奪戦に耐えることのできる服装で臨む。と言っても普段とほとんど変わりはしないが。東長寺では護摩焚に間に合い、すぐ横の椅子席に座って護摩木の燃やし方を見る。広い本堂に声明と煙と銅鑼や法螺貝の音が響く。護摩焚が終わると、分厚い経本で肩や背中を叩いてもらう。「歳徳、歳徳・・」の声の中、頭を垂れて叩かれると、今年も平穏でありますようにの願いが叶うような気がする。 
 

 
経本で背ナ叩かれし追儺かな      光子

よき声の読経聞こえて寒の寺      光子 
 
何回目かの豆撒きが始まる。端っこながら前列に陣取ると、飛んでくるのはいいが、争奪戦も凄まじい。物欲は相当なものと自身でも思うくらい地面や人の背中に落ちた福豆を拾う。
東長寺では7−8個だったと思うが、その後の櫛田神社での豆撒きを合わせると、福豆31個、飴17個、餅2個、ボール1個を一人で拾っている。櫛田神社の最終回の豆撒きは、大箱をひっくり返すように投げるので、場所によっては上から福豆が降ってくるほどなのだが、その気がなければ手に入れることはできない。各々沢山拾ったが、今年は三人とも数少ないボールを手に入れたのが嬉しい。煩悩深き我、今年も健在である。 
 

 
鍔帽に飛び込みし豆節分会        由紀子

豆撒や菓子もボールも飛んできて     光子

豆撒きや譲ってばかりはいられない    節子

豆撒の宮にけが人スリまでも         節子

 節分会博多一本絞めて果つ        由紀子 
 
 2月8日、今月の本来決めていた吟行はこの「針供養」。福岡三越に隣接する警固神社の境内で毎年行われていると聞いていたので、10時半三越のライオン像の前に集合。いつもの折尾駅10時14分の快速で博多に向かい、地下鉄で天神に行く。予定時間より少し早いので、ライオン像の近くの「福岡観光案内所」で針供養の時間など聞いてみた。とんでもないことに10時半開催で神事は30分くらいで終了すると言う。なぜか11時と思い込んでいたので、慌てて節子さんと光子さんにメール。光子さんからは都合で予定時間より遅れると返信メール。節子さんからは直接警固神社に向かうと連絡あり。お二人に申し訳なく思いながら、警固神社へ急ぐ。
 
  
 
小雪のちらつく境内に「針乃碑」があり、「針まつり」の赤い旗と、鯛や野菜の供物が供えられている。針供養ならではの豆腐が三ヶ所に置かれ、椅子が並べられていく。着物姿の男性女性が集まり、若い女性も遠巻きに集まり始めている。禰宜が用意されたマイクの前に立ち、もう一人の禰宜がお払いの幣を両手に持ち、いよいよ始まろうとしている。まだ節子さんは来ていない。カメラで様子を写し後で二人に見せようシャッターを押す。祝詞が奏上され、前列の和服の紳士達が針を納めはじめる。見学の人も多くなっていくなか、いつの間にか節子さんが横に立っている。神事が終わらないうちでよかったと胸をなでおろす。 
 
針供養和裁士会の幟立ち         節子

低頭の白きうなじに風花す       由紀子

 袴穿く男八人針納               節子 
 
   
 
何故11時開始と思い込んだのか、節分の豆撒きのように何回もあると思ったのか、花祭りのように何時でも数名の女性がいて甘茶を振舞ってくれるように思ったのか、未だに理由がわからないのだが、集合時間を決めた自分が神事の時間を確認しなかったのは確かなことで反省。
神事が終わり椅子も片付けられた後、光子さんが到着。供物と針のさされた豆腐と持ち寄られた針を入れるバケツのみが残されている。針も持ってこれなかった人はバケツの中の針を刺しても良いというので、刺してもみたが、日頃めったに針仕事をすることがないので少しばかり後ろめたい。光子さんは自宅から用意してきた針を刺す。
 
糸付いた針も豆腐に針供養          節子

針供養木綿豆腐が十二丁           節子

糸つけし針もさされて針供養        由紀子

針供養終わる豆腐の角乾き        由紀子

針供養わづかなれども納めけり       光子 
 
   
 
昼食は警固神社前の国体道路を赤坂方面に5分ほど歩いたビル五階の「博多廊」。九州の食材で九州料理をだしてくれる人気店である。空き席があり、寒さに悴んだ手や体を美味しい料理で温める。
寒い時期なので、針供養の後の予定は天候次第にしていたが、「けやき通り」を抜け、このまま大濠公園まで歩く。公園近くの「福岡県護国神社」の前にさしかかり、三人とも神社に足を踏み入れたことがないので、一度入ってみようと大きな鳥居を潜る。巨木に覆われているので、鳥居を潜るまでその境内の広さを知らなかったが、中央に芝生広場が広がっている。ここは明治元年、福岡藩主の黒田長知公をはじめ、県内の旧藩主等が明治維新で国難に殉じた人々を顕彰するため、招魂社を設立し、祭祀をおこなったのが始まりとされ、国の安泰と平和を願い建立された神社で、祭神は明治維新以後の戦役・事変下一円の約13万柱の英霊である。英霊を祀る独特の雰囲気に、境内を足早に見てまわる。
 

 
早春のブティックけやき通り店      光子

英霊の護国神社に雛飾り         節子 
 
   
 
大濠公園入口の「広田弘毅像」(修猷館 一高 東大卒 昭11−12総理大臣)の辺りから公園内に入る。北風が強く、池周辺の柳の枝は真横に流れている。それでも市民の憩いの公園だけあって、ジョギングする人やウォーキングする人の足音が後ろから近づいてくる。園内のスタバはほぼ満席だが、少し待って池を眺めながらの席を待つ。池は寒風に波立っている。鴎と鵜が池の中央一列に打たれた杭に止まって動かない。暖かい日や餌をあげる人がいる時には、群れをなして飛ぶ鴎が杭にじっとしている様子をすぐに句にするのは、さすが節子さんである。 
 
鴎と鵜休んでばかり泳ぐ鴨        節子 
 

 
公園内の市立美術館のロビーの端で三人の句会。天神までバスで戻り解散。 
 
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