吟行記
【平成24年5月号】 
 
第93回 平成24年4月5日(木)
参加者   節子 光子 真理子 由紀子
水城跡と都府楼跡の花見(太宰府市)  
 
 今年は正月から暖かい日が少なく、木々の芽吹きも花の開花も全般的に遅い。毎年桜の開花がいつになるのかが話題になるが、今年の福岡の開花宣言は3月27日。
平年より4日遅く、昨年より5日遅かった。今年の花見を太宰府近辺でしようということになり、都府楼址と、まだ行ったことの水城跡での花見となった。4月5日は史跡での美しい桜が期待できそうだ。
4月5日、JR水城駅10時半集合。大野城駅と二日市駅の間の普通電車のみ停車する駅なので、吟行でなければ、なかなか降り立つことがない。節子さん、真理子さんはすでに到着して、駅前を散策している。節子さんの車で水城跡に向かう。水城は、大和朝廷が大宰府政庁を守るために築いた土手。現在では国道や高速道路やJRなどで分断されているので、小高い土手が所々に残されているのみというが、一度は足を運びたい旧跡である 
 
   
【水城駅と桜】
 
「水城」についてを調べたことを書き留めておく。
@ 日本書記の記述・・・「筑紫に、大堤を築き水を貯へ、名けて水城と日ふ。」
A 「水城」とは664年に唐と新羅の攻撃に備えて築かれた太宰府の防衛施設である。大和朝廷は、大陸に一番近く盛んな交流と進んだ文化を取り入れる北部九州の拠点の太宰府を、都から離れていたにもかかわらず重要な場所としてきたが、663年の「白村江の戦い」で唐や新羅の連合軍に敗れたため、その進攻に備える必要があった。水城の他に、大野城や基肄城(きいじょう)の山城も築き、また対馬、壱岐、筑紫国に防人や烽火(のろし)を備え、太宰府の防衛に力を注いだ。「白村江(はくすきのえ)の戦い」・・・唐、新羅に滅ばされた百済復興のため、日本は661年援護軍を派遣したが、ここで壊滅的に敗れる。
B 水城の規模は、全長1.2キロ、基礎部の幅80センチ、高さ10メートルを超える人工の土塁。
C 博多湾側に幅60センチ、深さ3−4メートルの外濠が造られ水が貯えられていた。
実際目の前の「水城跡」は、その歴史を知らなければ単なる川のない土手であるが、土手に沿うように植えられている桜は満開で、親子連れが遊びにきている。やわらかな草を踏みながら土手に登ると、樹木を伐採している。繁りすぎないように整備しているようだ。 
 
    
【水城跡の案内板】
 
筑紫野に満つる春光水城跡         光子

教習所水城のそばに出来て花       節子

雨蛙ものにとまりて水城跡          節子

花飛んで水城の丘に降り注ぐ        節子

花の屑水城の丘の小径にも         節子 
 
  
【現在の水城跡】
 
少し高い広場になっている所から眺めると、国道と建ち並ぶ家々の向こう側に小高い土手が同じように桜が植えられ、西側に延びている。それも水城跡らしい。博多の街に続く北側は広く展け住宅がずっと建ち並び、南側の太宰府方面は山々が連なっている。この場所に政庁を置いて、他国の侵略を警戒しながら統治したのが納得できる地形である。
昼食は都府楼近くの「田惣」。以前にも利用したことがある民家風の和食のお店で、掘り炬燵式のテーブルに季節の料理が並ぶ。ゆっくりおしゃべりや句作のできるのがよいが、ついつい長居をしてしまいそうである。
次の吟行地「都府楼跡」も桜は満開で、多くの家族連れが遊びに来ている。花見客は花の下でシートを広げ、お弁当を食べたり、子供たちも大人もシャボン玉遊びをしたり、ボール遊びしたり、楽しそうに遊んでいる。都府楼跡の傍を沿うように川が流れ、桜の木が植えられている。桜の花は時折花吹雪となり、川にも都府楼跡の礎石にも降り注ぐ、絶好の花見となる。大きな礎石に皆で座り、節子さん持参の野点のお抹茶をいただく。車で運ぶとはいえ、ここに野点の用意をしてくる節子さんの心遣いに感服。 
 
  
【食事処「田惣」と庭】
 
駆け回る子らに散る花都府楼跡       節子

花の屑背中合わせの大礎石          節子

都府楼の礎石に座る花見かな         節子

若草の息吹きみなぎる都府楼址      真理子

花吹雪四王寺山へと吹き渡り        真理子

しゃぼん玉横ざまの風追いかけて     真理子

いしずえの語るいにしえのどかかな    真理子

花の屑あつめて母の手のひらへ      真理子

縄跳びを大きく回し花の下            光子

シャボン玉風のさらひて大空へ        由紀子 
 
  
【都府楼跡と花見客】
 
午後三時すぎになると風が少し強くなり、散る花は吹き上がるように都府楼跡の空を流れていく。水城、都府楼を巡る花見は、贅沢と思えるほど満開で至福の時間を過ごすことができた。
近くの資料館を見学し句会。駅まで送ってもらい解散。 
 

【都府楼跡】
 
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