吟行記
【平成24年7月号】 
 
第95回 平成24年6月15日(金)
参加者  節子 光子 由紀子
那珂川水上バス遊覧(福岡市中央区)  
 
6月15日、今にも降り出しそうな空を見上げながら、博多駅から天神までバスで行く。「アクロス福岡」に10時15分集合予定。この近くの「福博であい橋」から博多港(ベイサイドプレイス)まで、去年から水上バスが出ているというニュースを聞き、福岡の街を川から眺めるのも面白いと計画する。問題は天気。この水上バスには屋根がないらしい。水上バスの第一便は10時35分。この辺りは旧県庁跡地を再開発した場所で、アクロス福岡、福岡市役所、広い天神中央公園などがあり、繁華街中洲と天神のオアシスのような所だが、買い物で行く天神なので、商業ビルの名前は知っていても、「福博であい橋」がどの橋なのか分からない。アクロスに集合したものの、心配していた雨がポツン、ポツンと降り始める。
 
   
【天神中央公園と福岡アクロス】
 
出港しなければ辺りを散策するだけでもと思っていたが、「水上バス乗船場」の旗を見つけ、船頭らしい若者が立っているので、出港の予定を聞くと一便は予定通り出港するらしい。背広姿の中年男性が一人傘をさして乗船している。少し離れたところに繋がれている屋根付きの屋形舟は夜の遊覧用で、昼間の遊船には使用しない。恨めしく空を見上げても晴れそうにない。水上バスは白い小奇麗な舟で座布団を備えた椅子席になっているが、やっぱり屋根がない。薫風を切って走るのではなく、どんよりとした梅雨雲からの雨に傘をさしながら乗り込む。舟は予定通り岸を離れる。 
 

【水上バス乗り場】
 
「であい橋」より舟に乗り梅雨の川     由紀子

水上バス梅雨傘さして乗り込みぬ     由紀子

屋形船繋ぐロープに五月雨るる      由紀子

乗船の片道切符梅雨の川           節子

遊船の船頭若き二人なり            光子 
 

【博多川の水門】
 

【博多港に停泊中の豪華客船】
 
若者の一人が舵を取り、もう一人がマイクを持って川から眺める博多を案内する。客は中年男性と私達の四人。つっこみを入れればすぐに返ってきそうなノリの良い若者だが、背広の男性は一言も声を出さず、こちらも傘をさしながら中洲の風景をじっと眺める。どしゃぶりではないが、雨はだんだん強くなってくる。雨に打たれながら案内のマイクは淡々と説明を続けている。那珂川から中洲を挟んで博多川となるところに水門が見える。街を歩いていても分からない風景が見えてくるのが面白い。いくつもの橋を潜り、中洲を離れて倉庫群のある港へと進んでいく。もともと船の運航を想定していない川なので、潮位の高い時には頭を低くしたり、欠航もあるらしい。
ボートレース場や停泊中の大型客船を眺めながらベイサイドプレイスの波止場に到着。 
 
水上より見上げる梅雨の博多かな     節子

座布団が救命用具梅雨の舟         節子

梅雨の波止水上バスにジャズ流れ     節子

博多川水門あいて梅雨に入る
        光子

屋根のない遊船に雨強まり来       由紀子

戻り来し乗船客も梅雨に濡れ         節子
 

【水上バスよりの景色】
 
 志賀島や壱岐行きのフェリーが出ているので、乗客が列をなしている。乗ってきた水上バスは乗客なしで雨の中を戻っていく。フェリーの出た波止場はがらんとしている。大型水槽の魚を暫く眺め、節子さんの勧めで「博多ポートタワー」の展望室に上ってみる。360度の視界に思わず歓声。雨にけぶる湾、遠くの島がうすうすと見える。
帰りはバスに乗ってアクロス福岡まで戻る。アクロス福岡は、国際・文化交流の拠点として1994年開業した公民複合施設である。建物の南側の段状のステップガーデンは、昨今はやりの「緑のカーテン」を先取りした斬新なもので、隣接の天神中央公園と一体化して、福岡市一番の繁華街・中洲と天神のオアシスになっている。
 
   
【ポートタワーと乗船場】
 
「福博であい橋」は武士の住む福岡部と商人の町・博多部を分ける那珂川に架かる橋。近くに「旧福岡県公会堂貴賓館」がある。桜の木に囲まれた中央公園にひっそりと且つ優美に存在感を示している。
明治43年九州沖縄八県連合共進会の開催時の来賓接待所として建てられたもので、その後大正時代は「福岡連隊区司令部」として、また戦後は、厚生省民生部、福岡高等裁判所、水産高等学校、農林事務所など国、県の事務所として、そして昭和31年から昭和56年県庁が東区に移転するまで、福岡県教育庁として使用されている。
 
   
旧福岡県公会堂貴賓館
 
梅雨傘をたたみ明治の館へと       光子 
 
教育庁の移転後、明治時代のフレンチルネッサンス様式の木造公共建物の重要文化財として保存されることになり現在に至っている。とんがり屋根の一階にレストランがあるので昼食をとる。カレー、ハンバーグなど種類は多くないが、雰囲気で何でも美味しく感じられそうだ。珍しいからと注文したのは「そば粉のガレット」だったと思うが、味を思い出せない。
建物が重要文化財なのでガス火などは使うことができないらしく、多くのメニューはないが、天神のど真ん中でレトロな雰囲気を味わうことができるので、お薦めのお店である。
 昼食後、建物内を見学。2005年の福岡県西方沖地震で大きな被害を受けたが、その修復を終え現在に至っている。説明を聞きながら一通り館を見学し、「であい橋」を渡って博多部の近くのホテルオークラの一階喫茶室にて句会。通りには博多山笠の小屋が出来つつある。あと二週間すれば、この辺りは山笠一色になる。初めての追山笠を見た時の興奮、土砂降りの中の追山笠、それぞれ面白かった山笠を思い出しながら、雨の強まる中解散。
 
 山笠の小屋に槌音祭り前         由紀子
 
   
「であい橋」と組立中の「飾り山」
 
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