吟行記
【平成24年8月号】 
 
第96回 平成24年7月13日(金)
参加者   節子 光子 真理子 由紀子
宇美八幡宮(糟屋郡宇美町)  
 
今年の7月11日から14日に「平成二十四年北部九州豪雨」と命名されるほどの豪雨が、熊本県、大分県、福岡県を襲った。川の氾濫、土砂崩れなどで、連日あちこちで被害状況がテレビで放映されていた。その最中の13日の吟行である。場所は博多駅から約10キロほど山側に入った「宇美八幡宮」という古くから安産祈願で有名な神社。
前日12日は熊本の阿蘇地方の白川の氾濫があり、13日の当日は大分の日田、中津地方に警報が出ていた。福岡は雨の予報ではあったが、警報は出ていなかったので、予定通り電車に乗り、集合場所の宇美駅に向かう。それでも時折激しく雨が降るので、車で四王寺山を越えて来る節子さんを心配し、場所変更も考えたが、運転中なのか連絡がつかない。香椎駅から電車を乗り換える頃には雨は止み、真っ黒な雲も消えている。このまま雨が止むか小降りになることを願うばかりだ 
 

【宇美八幡宮本殿】
 
集ひたる終着駅の黒南風に     真理子 
 
13日11時40分宇美駅集合。節子さんと真理子さんは車で、光子さんは直方経由の電車で、由紀子は電車を香椎で乗り換えて宇美駅に辿り着く。電車は雨の影響で少し遅れがあったが、無事全員集合。
雨は小降りで、すぐに車で宇美神社に向かう。境内に入ると、守札授与所の中で少し動きはあるものの参拝客はいなく、神門に置かれている夏越祭の案内や子供の書道展の展示、七夕飾りなどを見て回る。境内は大楠で覆われているが、本殿横の大楠は特に樹齢二千年以上の大樹で、県の天然記念物に指定されている。一本で「湯蓋の森」と名づけられている大樹は、自然と手を合わせるほど神が宿るような気を漂わせている。裏手にも同じように「衣掛の森」という洞のある楠大樹も樹齢二千年以上といわれている。境内には他にも大樹はあるが、注連縄を張られたこの二本の大幹に圧倒される。 
 
   
衣掛の森】                              【湯蓋の森】 
 
一木で森なす古木梅雨深し     光子

衣掛の大木は楠梅雨の中      節子 
 
 「衣掛の森」の大樹の奥に「産湯の水」、本殿裏には「子安の石」が沢山置かれている。この八幡宮の安産祈願の謂れは、神功皇后がこの宇美の地で応神天皇を出産されたことに由来する。こぶし大の「子安の石」は、安産の祈願を終えてから、お産の鎮めとして預かって持ち帰り、御願成就の際には、別の新しい石に生まれた子供の名前を書いて、お宮参りの祈願のお祓い後、預かった石と共に新しい石を添えてお返しをする。それらの石が沢山置かれているのは、それだけ信仰を集めているのだろう。
この日は吉日だったのだろうか。この雨の中をお宮参りの一家族が本殿に上がっていった。雨脚は強まり、雷も鳴り出す中、祈願の太鼓が境内に響く。祈願が終わると家族皆で子安石の方へと傘をさしながら行っている。見ている我々も幸を願う。
 
  
【宇美八幡宮境内】
 
雷鳴に神鼓打つ音重なりて     光子

楠青葉祈願の子安石積まれ     由紀子 
 
境内の裏手から出て奥宮へと行こうとしたが、まだ鳴る雷に引き返す。奥宮へつながる橋の下を流れる川は茶色の濁流で流れも速い。本殿のある境内に戻り、社務所横の葭簀で囲まれた休憩所を見つけ句作。雨が強くなり駐車場の車へと移動する。 
 
奥の宮までの雷いつまでも     節子

上宮へ梅雨の川越す橋かかり
    光子

雨の粒葭簀を横に伝ひをり     真理子 
 
   
【食事処「やまもも」の店内と定食】
 
宇美町から隣町の須恵町へ車を走らせる。若杉山の麓の皿山公園内の隠れ家のようなレストランで、一目で美味しいと思うような素敵な店構えである。実際に注文した「やまもも弁当」はびっくりするほど安くで美味しい。店内から見える公園の庭は山へと続き、降ったり止んだりの雨も、山の緑を濃くしているように感じる。人気店らしくこの日も客でいっぱい。食事後、ケーキを注文してゆっくり句会。ほとんどの客は帰り、静かになった店内の七夕飾りと壁に掛けられた一輪の花に、ありがとうの声をかける。大満足の食事処「やまもも」を出て駅まで送ってもらい解散。(帰りのJR鹿児島線は電車の運休や遅れで駅構内は混雑したが無事帰宅) 
 

【食事処「やまもも」】
 
あたたまるものも一品夏料理    光子

いやいやに好きな杏のケーキ分け  光子 
 
次の14日には、柳川市、八女市、うきは市など県南の川が氾濫し大きな被害がでた。この宇美町辺りも被害のテレビ放送はなかったが、かなりの雨量だったと思われる。一日違いで吟行はできたが、年々大きくなる自然災害に不安を覚える。 
 
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