吟行記
【平成24年12月号】 
 
第100回 平成24年11月9日(金)
 
参加者 勝利 佳与子 節子 光子 真理子 由紀子
 
瀬板の森と曲里の松並木(北九州八幡西区) 
 
今回久しぶりに全員参加の吟行となった。吟行地の「瀬板の森」は何度か足を運んだことがあるが、野田夫婦と真理子さんは初めてらしい。ここは黒崎に工場のある三菱化学の貯水池だった用地を北九州市が整備をして平成9年より開放している公園。貯水池をはさんで西側には展望台やアスレチックの遊び場があり、対岸の東側にはパブリックのゴルフ場がある。池の周囲のこんもりと木々の茂った道は散歩にもってこいの場所である。 
 
   
 
11月9日 10時半を目安に現地集合。節子さん、真理子さんを折尾駅から車に乗せ南口に予定通り到着。野田夫婦、光子さんの車も直ぐに到着。さっそく公園を散策する。
入口付近には萩が刈られずに枝を伸ばし、少し日陰になっている所にはシダ類が群生している。紅葉の始まった森は穏やかな秋の日が差し込み、風もなく空には白雲が浮かんでいる。気温20度と絶好の吟行日和である。散歩する人、ジョギングをする人などとすれ違う。 
 
挨拶を交はす山道冬いちご     光子

山道に行き逢ふ人や冬ぬくし    節子 
 
 
 
雑木林の細い道を抜けると、明るい銀杏黄葉が目に飛び込んでくる。タイワンフウの木やアメリカフウの木はまだ紅葉していない。小さな広場になっているので、犬を連れて散歩している人も立ち止まり一息ついている。
木の橋を渡ると団栗が一面に落ちている。踏まねば先へ行けぬほどで、見上げれば椎か楢か大木の枝が頭上を覆っている。どこからか鴉の声に混じって笹鳴きが聞こえ、池には通し鴨がスーッと対岸に向かって水脈を引いている。木漏れ日の道は気持ちよく、時間が過ぎるのを忘れるほどである。 
 
ふた筋の水脈鴨のひく湖平ら     由紀子

倒木の割れ目定かに秋の風     由紀子

水脈ひいて乱す鳥影冬の水
       光子

冬ぬくし四人の歩調揃ひをり       光子

橋渡る先かさこそと木の実落つ     光子

鳰沼のにごりに潜きたる          光子

鳰もぐれば速し水に透き        真理子 
 
 
時計を見ると11時半を過ぎている。まだ半分も歩いていない。食事の予約時間を遅らせてもらい、展望台からざっと一望し、「もみじ谷」へ抜ける道へと戻る。公園のシンボルでもある展望台の広場の下には「水の丘」といって水路が引かれ、貯水池の方へと流れている。広場の斜面の草や水路脇の櫨やハナミズキの木々、「水辺のテラス」に並び立つラクウショウ(沼杉)など、いかにも晩秋から初冬の風情で去りがたいが、駐車場までの距離を考えると留まってはいられない。
 
蜘蛛の囲に落葉架かりて落ちきれず   勝利

辺りに木なき高さより紅葉降る       節子

歩きゐることの楽しく落葉道         節子

笹鳴の遠慮がちなる下山道         節子

破れ囲の中に骸の冬の蜘蛛        光子

紅葉谷より人の声鳥の声         佳与子

返事して紅葉中より現れし        佳与子

自転車を押して上がりぬ紅葉坂    佳与子

ジョギングの人下り来たる紅葉坂   由紀子

木の実降る森に呼び合ふ鳥の声   由紀子
 
  
 
「瀬板の森」を後にして、ホテルクラウンパレス(旧プリンスホテル)に向う。車で15分位かかっただろうか。10階の日本料理店「七福」の窓際の席から黒崎の街を眺めながら昼食。専門店街のプロムナードもトマトの温室もテニスコートも無くなったが、ここに来ると子育ての頃を思い出す。
昼食後、横の長崎街道の松並木を散策しようとホテルを出る。長崎街道の起点の小倉から黒崎、木屋瀬、飯塚、内野、山家、原田(筑前六宿)と続き、佐賀、長崎と入って行く。当時の松は二本のみ残り、ほとんど後に植えられた松だが、昔日の面影を残した街道として整備されている。 
 
綿虫や松の街道暮れ初めて      真理子

この辺り長崎街道新松子        佳与子

四阿の屋根の草々紅葉して       佳与子

冬木松並木長崎街道に           光子

テニスせしコートなりしが草紅葉    由紀子

レッスンを帰る娘らしく暮早し
       勝利 
 
 
日が傾き、少し体も冷えてきたのでホテルに戻る。喫茶店で句会もいいが、ちょうどロビーの端にテーブルが三つほどあり、誰もいない。テーブルと椅子を寄せ句会。16時解散。
翌日は雨降り。全員揃っての穏やかな一日を過ごせたことが何よりである。 
 
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