吟行記 【平成25年2月号】 |
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第102回 平成25年1月11日(金) | |||
参加者 節子 光子 真理子 由紀子 | |||
十日恵比須神社(福岡市東区) | |||
今年最初の吟行は、商人の街博多の十日恵比須神社の「正月大祭」で始まった。毎年のように訪れていると、行かねばならないという気になってくる。今年は11日の「残りえびす」又は「残り福」とも呼ばれる最終日。1月11日吉塚駅に10時集合予定だったが、JR鹿児島線下りの列車の遅れがあり10時30分集合となる。 改札口で合流し、新年の挨拶を交わしながら駅から十日恵比須神社のある東公園へ向う。 すでにお参りを済ませて福笹や福引の縁起物を手に帰っている人とすれ違う。 「正月大祭」は、8日「初えびす」、9日「宵えびす」、10日「正大祭」、11日「残りえびす」と続く。最終日の「残りえびす」の公園には、いつもの猿曳きの姿はなく参道の露店も人出も少ない。それでも雲ひとつない真っ青な空に福をいただいた気分になる。年末年始からずっと寒く、雪がちらつきそうな日が続いていたので、久しぶりの快晴が嬉しい。 |
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穏やかな日和賜り残り福 由紀子 鳥居まで続く露店や初恵比須 節子 寂しくもあるほどの人残り福 節子 初えびす空すっきりと晴れ渡り 光子 |
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東公園の一番奥にある神社まで歩く。本殿前に並ぶ列も鳥居までと短く、例年のごったがえすほどの参拝客はいず、最後尾の案内板を持つ係員もいない。開運御座や博多券番の芸妓たちの徒歩詣りなど華やかな行事は済み、福引が残っているのみで、それも午後2時までとなっているので、人出が少ないのは当然かもしれない。長い列に並んで待つことなく福引を引く。禰宜の抱える大筒の中に手を入れ、長い棒を引く。こちらには何が書かれているのか見えないが、「あたりー福寄せ」「大あたりー満福」と威勢のよい声と共に、当った縁起物が福笹と一緒に手渡される。禰宜の声は発声練習の賜物のような太く張りがあり境内に響き渡る。 | |||
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並べたる顔福笹に祓はれて 真理子 植木市なども巡りて戎笹 真理子 福笹を手に手に笑みをこぼしあひ 節子 福笹の青々として授与されし 光子 福引の当りかついで大股に 光子 福みくじ十四時までと残り福 由紀子 |
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それぞれに福笹と縁起物を持ち、食事処として予約した「レガロ」に向う。二度ほど行ったホテル内のレストランなので、多分この道と言いながら歩いていくが、ひとつ曲がる場所を間違えたようで様子が違う。 初めての通りに戸惑っていると、間口も奥行きもほとんどなく入口に商品を置いただけの小さな店があり、年配客3-4人が豆を買っている。「ここのは美味しいよ」と言うので寄ってみる。入口に何種類もの豆や昆布、干したアゴ(飛魚)を置いている。商売気はあまりなさそうだが、商品には絶対の自信がありそうで、とりあえず小袋の「白花豆」とアゴを購入。(後日家で煮るととても美味しく、再度購入したほどである)その先の道沿いにも豆製品を売っている店があり寄ってみると、店内には恵比須神社の縁起物がいくつも飾られている。 |
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吉兆を手にして少し豆を買ひ 光子 福笹を持つ人と又すれ違ふ 節子 |
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結局レストランは小さな豆の店の真裏にあったのだが、皆で福笹を持って見つけたお店が、人の良さそうな老夫婦の商う豆の店で、道に迷って良かったと思える。何でも縁起がよいように思えるのは福笹のお陰かもしれない。食事も新年のメニューで満足。 もう一度十日恵比須神社に戻り東公園を歩く。神社内の露店は少しずつ片付けが始まっている。福引が終われば参拝客も来ないだろうから、端の方にある露店は軽トラに商品など積み込み始めている。 |
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残り福露店商早やたたみかけ 節子 早々と仕舞ふ露店も残り福 由紀子 片付けを急ぐ露店も残り福 光子 |
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公園内の亀山上皇の像を仰ぎ、入口の日蓮の像を仰ぐ。元寇襲来に縁のある二つの像は高々と玄海灘を見据えている。上皇の像の台座の横にしばらく座り、正面の県庁の建物、公園内の広い枯芝、青い空、飛び立つ鳩の群れ、池に浮かぶ鴨などを見ながら句作。 | |||
福笹の青々としてちぢれをり 由紀子 晴れ渡る空に鳩翔つ初戎 由紀子 何がしの上皇の像寒の晴 由紀子 戎笹忘れて歩きをりたる葉 光子 福笹の吾に道きく人ありて 光子 日蓮と向ひ合ふ我も冬の日に 節子 日蓮の像高々と初御空 真理子 父子われ等十日戎に迷ひもし 真理子 |
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公園を出て吉塚駅まで歩き、電車で博多駅に向う。2011年3月の九州新幹線全面開通に伴いリニューアルした博多駅は、阪急百貨店、アミュープラザ、東急ハンズが入店し、「博多シティ」として以前にも増して多くの人が集まっている。ここの魅力は色々あるが、阪急側博多駅三階の「えきなか」にある全面ガラスの広い休憩所もその一つ。 そこからは電車の発着が見え、電車好きの子供用に小さな椅子が並べられている。大人用には丸テーブルと椅子がゆったりした間隔で置かれているので、横の売店の珈琲や紅茶を飲みながら休憩できる。このまま改札口にでることなく電車に乗り換えることもできるのも利点で、博多駅の穴場ような休憩所である。ここで10句の句会。16時30分すぎ解散。 |
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後日、NHKの「鶴瓶の家族に乾杯」という番組に福岡市と北九州市の中間にある宗像市が取り上げられ、宗像大社や玄界灘に浮かぶ大島や地島が放送された。「みあれ祭」や「高宮祭場」も紹介され、この地の良さが出ていて嬉しかったが、もう一つ印象の深いものが映っていた。 鶴瓶さんや女優さんと話した島の漁師さんが、収録後に家族揃って「鶴瓶さーん、また来てねー」というシーンの座敷の床の間に、十日恵比須神社の福笹と縁起物がずらりと飾っていたのを見た時、恵比須神は福神であり、商売繁盛の神であり、古くからは海の神であることを再認識させられた。よき年でありますように!! |
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