吟行記
【平成25年5月号】 
 
第105回 平成25年4月12日(金)
参加者 勝利 佳与子 節子 光子 真理子 由紀子
 
宮地獄神社(福津市) 
 
 桜も散り、そろそろ牡丹の咲く時期なので、久々に宮地獄に行くことになった。あの雨の中での節分会以来である。四季折々に花を楽しめる神社なのに、何故か遠のいていた。
4月12日10時30分福間駅集合。タクシーに乗り吟行地「宮地獄神社」へ向い、車で来た野田夫婦と本殿脇の駐車場で合流する。本殿は、新緑の山を背に大注連縄を際立たせて鎮まりかえっている。
境内の緋寒桜は若葉の枝を伸ばして、こんもりと盛り上がり、楠の若葉大樹が風に光っている。参拝客はほとんど居ない。風吹く境内に鶯の美しい鳴き声がよく響く。
参拝を済ませ、本殿裏の八重桜の並木道を抜けて牡丹園へと下りて行く。まだ牡丹の莟のほうが多いが、色どり豊かな大輪の花が咲いている。しばらくベンチに座って眺めていると、親子やご夫婦らしき幾組かが、牡丹を眺めては去っていく。 
 
   
【楼門と牡丹園】
 
鶯に大注連縄の社かな          由紀子

紅帯びしかなめ若葉や巫女二人    真理子 
 
 牡丹園の斜面に、枝が皆上向きの箒のような樹形の木が美しい花をつけている。桃のような淡いピンク、濃いピンクの花は満開で、若葉の森の小道をさらに明るくしている。後で調べると樹形のとおり「ほうき桃」というらしい。約40本植えられている。斜面を下りると菖蒲池が広がっている。シーズンになると賑わうが、まだやわらかい新芽がでている程度。池の木道までは下りないが、池に沿う道を奥へ奥へと進んで行く。
歩いていると、どこからか花びらがひらりひらりと舞ってくる。その中に蝶が紛れている。すかさず皆句帳に書き込む。静かな景色に少しでも動きがあると良い句材になる。 
 

【ほうき桃】
 
飛びながら落ちゆく蝶に風強く      節子

初蝶の行方見送る四人の目      佳与子

花びらに紛れて小さき蝶飛んで      光子

強東風に抗ふ蝶の行方かな       由紀子

白き蝶はらりと落ちて飛びもせず     勝利 
 
奥まったところの藁葺きの建物に入ってみる。ここには日本各地から移築復元した古民家があり、「納屋造り」と「くど造り」など案内板に書かれている。昔の農家の生活の様子がわかるようにはしているが、置きっぱなしで手入れをした様子はない。古民家の横と裏には、山羊、馬、ポニーなどが柵の中に放され、動物たちはじっとして気だるい目をしている。 
 
 
【古民家】
 
神苑の馬に馴れもし日永かな      真理子

ひもすがら長閑なるかな親子馬     真理子

首振りて厩出し馬ののどかなる     真理子

なでてみる馬の鼻筋牧のどか      佳与子

眠さうにポニーの親子八重桜      由紀子 
 
   
【「宮ZOO」と古民家】
 
案内板には「宮ZOO」の文字。動物園にしては動物が少なすぎるが、昔の農家が飼っていた動物を放しているようだ。ここに放し飼いの鶏が鳴けば、まさに田舎の風景。菖蒲池の向こう側の合掌造りの民家も高床式小屋も移築したもので、初めてこの風景を見たときは、何故神社の敷地に飛騨の合掌造りの民家があるのか不思議だったが、参拝する多くの人が、日本の原風景のような景色を目の当たりにして、心の豊かさを持ち帰ってほしいとの願いからではないだろうか。豊かな自然を活かした境内である。ただ、移築した古民家はどれも手入れがなされていなく、崩れそうな一角もあるのが残念である。 
 
古民家の天井高し春の風       佳与子

潰えたる家は藁屋根花楓       真理子 
 

【境内よりの景色】
 
12時30分本殿に戻り、大鳥居の下の参道の「宮地館」にて昼食。あの節分会の時には震える体をストーブで暖め、松ヶ枝餅を食べたあの店と思うが、リニューアルされた店内に驚く。宮地獄に来た時に利用していた「大力」と連絡がつかなかったため仕方なく電話で予約はしたものの、全く期待をしていなかったので、土産物の店の奥の垢抜けたテーブル席に目を疑った。料理もとても安くて美味しい。手作り豆腐が持ち帰りできるので購入。 
 
  
宮地館(他HPより)
 
昼食後、また石段を上り境内を散策。「この先に硝子工房があるはず」という真理子さんに従って、契池の南側方面に歩いて行く。この辺りは初めてで、竹林には今年竹が伸び、ムラサキケマンの花や名もなき草木の花があちこちに見られる。鶯もさらにのびのびと声を響かせている。作業車の通れる道沿いに硝子工芸の店と工房があり、中を見学させてもらう。店内にはアクセサリーから干支の蛇の置物など魅力的なものが置かれている。 
 
   
【硝子工房】
 
午後になり風の消えたる花茨        光子

うぐひすのその木にゐるとわかるのに  光子

鶯や息切れしそうにも鳴いて       佳与子

目に留まる度につぶやき華鬘草     真理子

緋牡丹や溶かす硝子の火にも似て   由紀子

参道は餅屋ばかりや若楓          由紀子

春潮の果てまで参道なりしこと      真理子 
 
参道の土産店内で句会。中庭の見える畳敷きのテーブルで、焼きたての松ヶ枝餅とお茶で一服しながら作句、10句の句会。ほかに客もいないので、すっかりくつろぐことができた。
広い境内を持つ宮地獄神社の半分をあるいたのみの吟行だったが、花や鳥や食事に満足し、句材も多く充実した吟行句会となった。海までまっすぐ伸びる長い参道を眺め、神社をあとにする。 
 
   
【句会場と福間駅】
 
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