吟行記
【平成25年7月号】 
 
第107回 平成25年6月14日(金)
 参加者  勝利 佳与子 節子 光子 由紀子
 
夜宮公園・九州工業大学キャンパス(戸畑区) 
 
毎月の吟行地選びに苦慮している。近場の名所は大方吟行しているので、毎回どこにしようかということになる。祭礼や風物詩となるような行事があれば優先的に行きたいが、吟行日に当るかどうか分らない。そうなると手っ取り早く季節の花や風景の美しい場所となる。今月は紫陽花か花菖蒲のどちらかで、集合に都合のよい所をと考え、花菖蒲の夜宮公園に決まる。勝利さん・佳与子さんご夫婦が下見をし、花の開花状態や駐車場、昼食、句会場など、計画を立ててくれる。 
 

 
6月14日 10時30分夜宮公園の駐車場で合流予定。八幡駅で節子・由紀子は光子さんの車に乗せてもらい夜宮公園へ向う。だが夜宮公園の駐車場は、最近新しく出来たのか地図やナビに入ってなく、違う所に停めたらしい。指定の駐車場に行くのに一苦労。大樹に覆われた広い公園は、丘陵地になっているので、入口が違うと場所がわかりにくい。
ようやく合流し、日本庭園のある菖蒲田を巡る。東屋には先客が何人かいる。4-5日前の土日の「花菖蒲祭り」には、大勢の人が訪れたと思うが、二番手の花芽が開花しはじめた花菖蒲に、人影はまばらである。ボランティアの人が少ないのか、菖蒲田は雑草が伸び放題になっている。蝶が菖蒲や草の陰から、ひらひらと舞い上がっている。
今年の梅雨入りは関東が5月29日と早く、九州北部も同じ頃梅雨入りしている。雑草はその影響もあるかもしれない。日本庭園側の紫陽花や夏椿がこじんまりと花をつけ、よく見ると蜻蛉もいる。曇り空が広がっているが、気温28度と暑く時折差す日差しは夏である。しばらく吟行する。 
 
   
 
花菖蒲池公園の東西に       光子

夏椿一花を杭にのせてあり     光子

夏の蝶黄色が白を追いかけて    節子

突として鳥のやうなる黒揚羽    佳与子 
 
丘陵地を登って、西側にある菖蒲池に向う。公園全体に楠の大木が多く植えられ、落ち葉が一面に敷かれている。上りきった所には、慰霊塔が立ち、桜の木に囲まれた大きな広場がある。イベントはここで行われる。そこを通り抜け、坂を下ると、大きな青い紫陽花と菖蒲池がひろがっている。花菖蒲は、先程の菖蒲田よりこちらの方が種類も広さも見応えがある。回りは木々で覆われ、紫陽花の花とサルビアなどの花文字の花壇の両脇には水が流れ落ち、菖蒲池へと流れこんでいる。池の中では一人の女性が黙々と花殻を採っている。居合わせた女性がカルガモの親子が池にいると教えてくれる。
菖蒲の間に親鳥を見つけ、子供もいるはずと捜すが見当たらない。親鳥はすーっと飛び去り、その辺りに子を探すがいない。探しながら、盛りは過ぎたが、それぞれに名前の付けられた美しい花菖蒲を見る。 
 

 
風ならんかなた揺れゐる花菖蒲   勝利

萎びたる去年の実もあり柘榴咲く  勝利

夏木蔭定家葛の花巻いて      光子

花菖蒲その名こぞりて教えくれ   光子

サルビアで彩る市制五十年     光子

黙々と花殻を摘む菖蒲池      節子

軽鳧の子を一羽も見つけられぬまま 節子

軽鳧の子を探しながらの池巡り   節子

手入れする女一人や菖蒲畑     佳与子 
 

 
この菖蒲池に辿り着く前に、公園内の弓道場を覗いてみる。人がいることを期待していなかったのだが、フェンスを隔てた弓道場には、袴姿の男性、女性が弓を射っている。青芝のまぶしい弓道場にピーンを張り詰めた空気が流れ、邪魔にならないように、こちらも静かに見守る。 
 
  
 
青芝の先の的へと弓を射る     佳与子

弦の音低く梅雨の矢放たれり    佳与子

松の芯朝の静寂に矢を放つ     由紀子

放ちたる矢追ふ横顔涼しかり    由紀子

矢を放つ音のみ聞こゑ夏木立    光子

引き絞る弓の重さや梅雨に入る   光子

緑蔭に距離九間の弓道場      光子

梅雨晴や射場に矢当る的の音    勝利 
 
「明専会館」にて昼食。窓際の席はいっぱいになっていたが、ここはいつもゆったりした雰囲気で句作にはもってこいの場所。昼食後、夜宮公園から近い九州工業大学のキャンパスに行くことになった。節子さんが以前住んでいた沢見社宅の横を通り、大学の広いキャンパスの西門から入る。守衛さんに許可とカフェの場所を教えてもらい中に入る。赤松の木立の中に校舎が並んでいる。学食はまだ賑わっている。その先にある新しい建物の1階にあるカフェに入ると、学生が何人か楽しそうに話している。外のテラスにもでられるが、冷房の部屋のほうが良さそうだ。アイスクリームやあん蜜など安くて美味しい。 
 
  
【明専会館と沢見社宅】
 
門衛の眠り束の間合歓の花     節子

学生に交じりカフェーの冷房に   節子 
 
10句の句会。外に出ると滴るような緑のキャンパスに工業大学らしい実験装置などが置かれ、学生たちの話し声が何処からか聞こえ、明るく活気がある。こういう時代もあったなーと思いつつ・・・あれから40年!! この沢見の社宅にも時々来たけど、それも20年以上前のこと。まさに光陰矢の如しである。沢見から高見に移動し、皆で夕食替わりの蕎麦を食べ解散。 
 
  
【九州工業大学キャンパス】
 
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