吟行記
【平成25年8月号】 
 
第108回 平成25年7月5日(金)
参加者 勝利 佳与子 節子 光子 由紀子 
 
門司港界隈(北九州市門司区) 
 
7月5日門司港駅に10時30分集合予定。野田夫婦は車で10時すぎ到着。節子さんと光子さんは、早目に来て、「九州鉄道記念館」を見学。そして私の乗った10時29分の電車が到着して、予定通り門司港駅に参加者全員が集合する。ちょうど開館10周年になる「九州鉄道記念館」は見応えがあったようで、よい吟行になったようだ。
門司港駅は九州の鉄道の起点の駅で、現在もこの駅から博多、熊本経由の鹿児島終点の鹿児島本線、大分、宮崎経由の鹿児島終点の日豊本線が延びている。九州最初の鉄道会社「九州鉄道本社」が明治21年に設立され、門司に本社が置かれる。当時貿易などで栄え、さらに日本の近代化に向けて製鉄所が建設されてから、輸送がさらに重要なものとなり、明治、大正、昭和初期、この界隈はモダンな建物が建ち並ぶモダンな街だった。その頃の車輌などが展示されているので、早く着いて見学するのも良かったかなと思う。門司港駅舎は修理中で、あの美しい屋根もシートで覆われいる。 
 
  
【起点・門司港駅】
 
梅雨湿り機械油の匂ひして     光子

赤れんが倉庫閉じられ梅雨湿り   節子

ミニ鉄道団扇片手に運転し     節子 
 
皆集合してから、さっそくレトロ地区に向う。まだ梅雨の明けていない港町には、湿った風と潮風が交じり合い、爽やかとは言い難い風が吹いているが、海峡と大橋とレトロな建築は、十分詩情を掻き立てる。 
 
 
【門司港レトロ地区】
 
門司港ホテルの近くに大小のクルーズ船が停泊している。大きい船はレストランになっていて、小さいピンク色した船が海峡を廻ってくれるらしい。小屋に出航の時間が書かれているが、中に人がいない。11時出航があるので、少し待っていると、青年とういうか少年といってもよい若者が、小屋の鍵を開け切符を切ってくれる。この時間の乗客は私達のみで船まで案内してもらって乗船する。若者も船に乗り込み、クルーズの所要時間、注意事項などを説明した後、操舵室に入り舵を取り始める。船長はもう少し経験を積んだような中年か、初老の男性と思っていたので、下船後年齢を聞いてみると二十歳だと言う。この年齢で免許は取れるらしい。 
 
  
【クルーズ船と跳ね橋】
 
跳ね橋の端が頂点雲の峰      勝利

波しぶきよけて汀に日傘さし    佳与子

跳ね橋の上がりし先の雲の峰    光子

停泊の船納涼のサキソフォン    由紀子

切符切る遊船の長二十歳      節子 
 
跳ね橋を通り抜けて海峡に出ると、潮流の速さと船の速さでスピード感があり、船室の窓には波が打ちつける。デッキに皆座って潮風を満喫している。対岸の下関の唐泊までは行かず、海峡の真ん中より門司港辺りをぐるりと廻って、また元の船溜りに戻る。貸切状態で、跳ね橋が上がっても上がらなくても通り抜けできる小型の船ならではの面白さがあり、船から港をみると陸からではみえない景色が見える。 
 
  
【クルーズ船よりの風景】
 
大橋の彼方に馬関船遊び      佳与子

潮風のさらふ夏帽胸に抱き     佳与子

大橋に返す関門船遊び       佳与子

跳ね橋をくぐる港湾夏の海     光子

白南風に絶えず砕けて舟の波    光子

早鞆の瀬戸に吹く風雲の峰     光子

皆少し離れて梅雨に座る椅子    光子

早鞆の潮に出でもし船遊      由紀子

南風吹く海峡船の水脈乱れ     由紀子

飛沫飛ぶたびに悲鳴や船遊び    節子

船溜り梅雨も終りの南風吹く    由紀子 
 
  
【国際友好記念図書館と旧門司税関】
 
何度も来ているレトロ地区だが、飽きることのない街である。昼食はレトロ地区のシンボル的建物の「国際友好記念図書館」の1階にある中華レストラン「大連あかしあ」。たっぷり食べた後、向かいの旧門司税関の建物に入る。昭和初期まで税関庁舎として使われていた所で、平成6年に北九州が復元した赤煉瓦造りの建物である。1階は吹き抜けのホールとなっていて、大きなソファーが置かれている。座って体を休めて句作。税関で押収した偽ブランド品などを展示しているが、ギャラリー、休憩室、喫茶、展望室として使われている。建物内の煉瓦は、所々白くなっている所があり、実際に使われていた煉瓦なんだなと判る。二階では写真展があり、美しい福岡、大分の景色や花、鳥の写真に癒される。 
 

【門司港ホテル】
 
句会場は門司港ホテルのレストラン。大皿に飾られたケーキと海峡を通り過ぎる船をガラス越しに見ながら句作。10句の句会。この門司港ホテルに最近売却話が浮上している。北九州市の第3セクター「門司港開発」の所有から投資会社への売却という話だが、まだ不透明らしい。北九州市が出資のホテルとは知らなかった。レトロ地区の要のように建っているホテルなので、より良いホテルとなってもらいたい。 
 
アロハ許されてフロント涼しげな   光子 
 
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