吟行記
【平成25年11月号】 
 
第111回 平成25年10月4日(金)〜5日(土)
参加者 勝利 佳与子 節子 光子 真理子 由紀子
船小屋温泉・岩戸山古墳(筑後市・八女市)  
 
8月に鵜飼吟行の話がでたが、全員の日程が合わず、鵜飼期間も終ってしまった。9月吟行日に、ふと真理子さんが「船小屋辺りがよかったよ」と言った言葉に皆興味を持ち、一泊二日の吟行が決まった。 
 
   
【筑後船子屋駅】
 
10月4日晴れ。今回も家庭の事情で遅れての参加となる。博多から新幹線に乗り換え、筑後船小屋駅で下りる。九州新幹線「つばめ」で博多から3駅目。博多ー新鳥栖ー久留米の次に「筑後船小屋」があり、次の駅が「新大牟田」である。同じ福岡県でも、知人や親戚もいない筑後までは行くことがないので、是非参加したい思いで、一人皆のいる場所へと急ぐ。
筑後船小屋の新幹線の駅舎は、在来線の駅舎と並んで建設され、どちらも真新しい。「筑後広域公園」内という駅の周辺は、ビルなど高い建物はなく、芝生や大きなからくり時計や芸文館などもあり、田舎に突然立派すぎる駅舎ができたという印象。乗降者数が少なく駅舎のみ目立つ。からくり時計は、国指定天然記念物「新船小屋のクスノキ林」の大樹をイメージしたもので、毎時0時になると演奏が始まり、木の枝葉が大きく広がり、この地域の名物が次々に登場するという。 
 

【からくり時計】
 
 秋晴のからくり時計温泉の駅     佳与子
 
タクシーにて、皆が昼食をとっている温泉宿「樋口軒」へ向う。歩けば遠いが、車だとすぐという距離にある。到着すると、ちょうど食事が終り、デザートを食べている。一息ついたところで泊まる部屋に荷物を運び、初めての船小屋温泉郷の吟行に出かける。

矢部川沿いの船小屋温泉は、稀少な含鉄高濃度炭酸泉で、江戸時代末期に発見され、湯治場として栄えている。レトロな「船小屋鉱泉場」の建物に入ると、鉄分の黄土色した鉱泉が誰でも飲めるようになっていて、地元の人らしい男性がペットボトルに鉱泉を入れている。柄杓が置いているので一口飲んでみると、体には良さそうだが苦い。五高に赴任した夏目漱石が、結婚したばかりの妻鏡子とこの温泉郷に立ち寄ったらしく、句碑が枝垂れ桜の下にひっそり立っている。句碑の「ひやひやと雲が来るなり温泉の二階」の句は、近くの「大和屋」という古宿で詠んだ句らしい。 
 
  
【船子屋温泉】
 
薬効のある鉱泉やいわし雲      由紀子

船小屋といふは湯の町秋うたた
    由紀子

漱石の曾遊の温泉宿蘆の花      真理子 
 
足を伸ばして広域公園内の芝生広場まで歩く。ここには川の駅「恋ぼたる」というしゃれた名前の温泉施設や物産館、野外ステージなどあり、駐車場に多くの車が止まり、家族連れで賑わっている。
近くの矢部川に架かっている船小屋大橋(赤橋)辺りから川原に下り、川に沿って宿「樋口軒」まで歩く。川は穏やかに流れているが、昨年の夏は大雨で氾濫し、沈下橋の木橋、通称「ガタガタ橋」まで壊し、その残骸が土手に置かれている。対岸に見える中洲「中ノ島公園」のクスノキの巨木群の幹は、地面から1−2メートル白く皮が剥げた状態のままになっている。濁流の激しさを物語っている。
 
  
【矢部川のガタガタ橋】
 
なめらかに堰越えて落ち秋の水    由紀子

秋草に橋の残骸干されあり      由紀子

いわし雲水禍の傷の残る木々     由紀子

ハヤの子の群れてゆるやか秋の水   光子

流失の木橋揚げあり秋の風
      光子

対岸の中の島より小鳥くる      真理子

水害の跡まだ木々に天高し      真理子
 
16時より宿にて10句の句会。夕食は真理子さんが吟行途中に買ってくれた名物「ハヤの甘露煮」も頂きながら、美味しさに満足。味よし温泉よしの宿にて一日目を終える。

二日目の朝9時30分 真理子さん手配のジャンボタクシー貸切で廻る。どこも初めての場所ばかりで、どこをどのように行ったのか、どのように書いたらよいのか困るほど見所の多い吟行となった。宿ーー恋木神社ーー山梔窩ーー石人山古墳ーー岩戸山古墳ーー八女茶畑ーー食事処(句会)ーー羽犬塚駅(解散)の順で廻ったと思う。 
 

岩戸山古墳
 

八女茶畑
 
レプリカの石人像へばった飛び      佳与子

木の実降る道を外れて遺跡へと      佳与子

石人の人形が原秋風に
             節子

せわしなく藁屋根歩くかちがらす       節子

ひっそりと武装石人薄紅葉          節子

コスモスを庭に育てて野良着干す     光子

古墳へとつゞく石段木の実降る       光子

木の実落つ石の階段すり減って      光子

周濠の深き古墳に木の実落つ      由紀子

羨道の暗きを覗くそぞろ寒         由紀子

墳丘の石人石馬あきつ飛ぶ        由紀子

古墳守る石人像に秋の雨          由紀子

いのこづち墳墓の丘に踏み入りて    真理子

石人の守れる墳墓昼の虫          真理子

木の実降る磐井の墓の石馬にも     真理子

庭先につづく茶の畑秋しぐれ        真理子

茶山とは丘なだらかに秋時雨       真理子 
 
一泊二日の吟行は、内容の濃い有意義なものでした。二日目の雨の吟行は句と写真で思い出して下さいね。 
 

【句会場・食事処】
 
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