(平成16年10月〜平成17年2月)


<H17.3月掲載>

平成17年2月(於 太宰府天満宮)  

光子

山容を阿蘇の焼山大きくし

節子 有明の海をかなたに雪残る

日脚伸ぶ引き出しひとつずつ整理

木の影のまだやさしかり春の庭

境内に古き絵馬堂梅三分

湯上りの地獄めぐりや春浅し
由紀子

山焼きの日時湯宿の掲示板

聖子 猫の恋幾度走るや迷い道

下萌に靴お揃いの三姉妹

白魚を一夜生かして眺めけり

けんけんぱしている姉妹草青む

なやらいに心の鬼は如何せん


<H17.2月掲載>

平成17年1月(於 宗像大社)  

聖子 雷鳴のとどろきわたる年の明け 光子 龍の玉ほどの秘密をひとつ持ち
冬の田のあちらこちらにどんどの火 故郷は荒れて無言や雪しまく
新婿を手荒く祝う寒祭事 初詣愛しぬくこと吉とでて
節子 やヽありてふいに潜りし鳰 由紀子 日の暮るるほどに大きく冬の波
末の子がとれば拍手の歌がるた 雪しまく海に暮れゆく朱鳥の碑
さばかれし鮟鱇のただだらしなく 飛び石の歩幅よかりし龍の玉

<H17.1月掲載>

平成16年12月(於 筑紫野市 二日市温泉)  

節子 一陣の風一陣の散る紅葉 光子 口伝え遠野民話や虎落笛
箒目に歩幅小さき冬の鳥 母の手の自在に動き毛糸編む
虎落笛厳しき時もありし父 初雪に緊張と安堵混じりおり
聖子 僧院の石階段に冬の月 由紀子 池の面の何も動かぬ寒さかな
騙し絵の窓北風に曝されて 集会はまだ始まらず虎落笛
変わらざるものとてはなく年の暮 つれづれに句会などして堀炬燵

<H16.12月掲載>
平成16年11月(於 北九州市若松区 高塔山 若松港)
節子 見覚えのある人おりし十夜寺 光子 信号所冬の入り江の高台に
小さき窓横切る冬の貨物船 セメントを積む船行きし冬の海
打楽器のように時折常鶲 すべきこと一日延ばし木の葉髪
聖子 寝転んで犬も一緒の日向ぼこ 由紀子 湖風に吹かれるがまま末枯るる
一茶忌や小さき子らの歌聞こゆ 古里の空をゆらして芋の露
時雨れても鈍色の月出しかな 初時雨湾に小さき弁財天

<H16.11月掲載>

平成16年10月(於 北九州市八幡西区 瀬板の森

由紀子 なおみどり残して桜紅葉かな 光子 冬近しさざなみ立てて風の道
木の橋を渡りしよりの木の実径 山緑溶かした色の秋の水
藪虱とんがり屋根の小屋見つけ 捕らわれしクマの体の草じらみ
節子 こおろぎの音の二つのづれ始め 聖子 名月は古き瓦を煌めかせ
原っぱに遊び惚けて藪虱 虫の音に近づけば又遠くなり
さざなみの立つ池の端冬近し 草虱ひっつく野原今はなし