自選句

【平成19年4〜6月掲載】


<H19年6月掲載>

「平成19年5月投句より」      

由紀子 劇場の奈落より出て若葉風 節子 この鳩も若葉の木陰好きらしい
掘ればすぐ筍茹でる女房かな 絶縁状美しき文字蓮の花
海峡に先帝祭の法螺の音 山の名を駅の名にして踊子草
光子 バスやめて歩く街道夏の風 真理子 緑陰に神楽待ちをり漁師町
贅尽くす屋敷の孤独白牡丹 赤米の田植えすみたる怡土の空
芝居小屋席のいろはに若葉風 雨にその色薄まりて踊子草
聖子 川べりの闇深くして朴の花
待望の男子誕生粽巻く
踊子草これが花笠これが顔

<H19年5月掲載>
「平成19年4月投句より」

真理子 嬉しげに虻飛ぶ小さき藤房に 聖子 姉帰国先ずは茶漬や花菜漬
かくれんぼして木苺の花の中 デジャブかと思える町の春夕べ
美しき冷茶のみほし春惜しむ 海棠の君と呼ばれし友の在り
由紀子 三越のライオンに待つ朧の夜 節子 帰り道白い蝶々とすれ違う
信号の青で来る彼朧の夜 藤の枝結びつけるも藤の蔓
花吹雪露店をたたむ男にも みな食べられそうな春の草の中
光子 山繭の羽織を形見分けとして
この婆でなくば紡げぬ山の繭
春灯下つがいの鶴を折りにけり

<H19年4月掲載>

「平成19年3月投句より」   

節子 春風やつり皮下がる渡し舟 光子 自転車を渡船に乗せて卒業す
駅裏はすぐ渡船場春の街 「眺め良し」春の波止場にビル売られ
嫁ぐ娘は昨日の我雛飾る 合格の張り出さる日の春の雪
真理子 草餅の湯気吹きまわる集合地 聖子 雛菊に聞く来る来ぬか来ると決め
離れたり寄ったり五本の春の傘 春風邪に咳の止まらぬカフェ店主
芽楓の雨粒に紅ことごとく 韮切りし刃先鋭く匂い立ち
由紀子 ダンスする人ゐてフロア春灯
橋桁の貝殻に寄す春の波
草を食む山羊の白鬚山笑う