自選句

【平成19年7〜9月掲載】


<平成19年9月掲載>

「平成19年8月投句より」  

由紀子 落ちて来し蝉地を低く低く飛び 聖子 海沿いのカンナ蕾の未だ固く
船虫をちょっと踏む真似佳与子さん 唐黍の葉も萎れ行く真昼かな
秋潮や岩間の泡のすぐに消え かげろうの生命の色やうすみどり
光子 水平の大いなる弧や夏の海 節子 秋の雲次の駅までついて来し
夏深し拾ふ人なき貝の殻 水の引くごと船蟲の消えにけり
荒布干てカリと音立て磯辺かな 墓掃除いつも出てくるエピソード
真理子 サンダルの砂払いつヽ晩夏とも 佳与子 軒灯篭吊るし玄関開けてをり
岩畳描き出しゐる秋の潮 挨拶状晩夏の候としたためて
寄せる波引く秋の波音染みて かささぎの渡来の鳥として親し

<平成19年8月掲載>

「平成19年7月投句より」        

聖子 虫かごの中に小さき森できて 由紀子 雲のせて湾に浮く島夏の潮
足裏に梅雨の張り付く心地して 浜木綿や古人の飾り玉
枇杷の実の只朽ち行きぬ網の中 墨吹くと注意書きあり烏賊生簀
節子 停車するたび夏の潮匂いくる 光子 夏帽子二つしゃがんでをりし砂
姫島にまた夏の雲かかりけり 夏雲の影のかたちに海の色
窓からは寝冷えしそうな風のあり サーファーに波まだ低き梅雨の海
真理子 領巾振の頂高く夏つばめ
海霧の流れ消しゆく夏の島
磨かれし万葉の碑の梅雨の文字

<平成19年7月掲載>

「平成19年6月投句より」  

光子 阿蘇五岳右にのぞみて大夏木 真理子 忍冬途切れ途切れに山の雨
つくばいに梅雨そそぎ入る竹の先 園庭のホースは束に梅雨に入る
おろしたて雨靴梅雨の泥よけて 払いたる蚊の紫に花の陰
聖子 山梔子の花に見惚れて泥道に 由紀子 仏塔も句碑も埋もるる濃紫陽花
六月や博多の町に長法被 屋根を越す木々より匂う忍冬
老鶯の声薄闇に消え行けり 葦平の描きし河童絵夏木立
節子 子雀の代わり番こに飛びはねて
早苗かご道に次々下ろされて
代を掻く農機具がふと牛に見え