自選句

【平成19年10〜12月掲載】


<平成19年12月掲載>

「平成19年11月投句より」 

節子 タクシーを待つ力士ゐし冬の街 由紀子 辻井戸の厚き石蓋花八手
刈りてなほ奥にはだかる刈蓮 煤けたる常夜灯ある冬の川
中洲へも行ける川風冬ぬくし 枯れ蓮の実の落ちて浮く濠端を
真理子 児の草履足にあまりて七五三 光子 こもごもの思ひの中に時雨かな
落葉掃く箒ぼこりや博多古図 父の手のまだやわらかく冬構
スクリューに巻きつく沼の破れ蓮 名残惜しとて折り紙の雪うさぎ
佳与子 鯉の餌を鴨にもやりて小六月 聖子 帰り咲く躑躅も普賢岳に今
粋筋へ渡る橋とや実むらさき 御薬師の縁日に売る毛糸帽
蓮根掘るエアーホースを伸ばしつつ 時雨るれば傘は深紅にあらまほし

<平成19年11月掲載>

「平成19年10月投句より」  

聖子 秋の野は小さき花の多かりき 佳与子 遅れくる一羽の鷹の渡りかな
水澄みて泳ぐ魚の影確か 一人降り九人乗り込む月の船
常暗き部屋尚暗く秋深し 公害の街とは昔秋晴れて
節子 大空に突然鷹の渡りかな 由紀子 鷹渡る雲間より現る七八羽
まず一羽現れてたちまち鷹柱 皿倉嶺より流れ来る水の秋
佳与子さん新居九階秋の空 国分けし川や数珠玉両岸に
真理子 浅黄斑いると手まねき藤袴 光子 感謝して歳九十にごり酒
秋祭り合図の花火火の粉飛ぶ 月縁をよぎる鴎も月の海
啄木鳥に気付きてよりの山静か 船窓に秋の日さして壱岐航路

<平成19年10月掲載>

「平成19年9月投句より」      (萩)

光子 今朝の夢思い出せずに鉦叩 真理子 穴涼しウツボの顔の鳥に似て
無駄な線ひとつもなきや草かげろう 防人の島へと続く鰯雲
砂止めの柵幾重にも浜の秋 釜底のおこげむすびし夜食かな
聖子 草伸びし庭に厳しき残暑かな 佳与子 扇風機まわし詰め所の巡査留守
水くらげ光透かせて光りをり 南国の花のまろびて残暑かな
野分来て尚も眠れぬ旅の宿 階段の際にまで寄せ秋の波
節子 とまるまで目で追うつもり秋の蝶 由紀子 ため池に水位の戻り葛の花
三交代勤務深夜の夜食かな 蔓あればひいてみる蔓秋山路
よく揺れる西戸崎線秋の晴 買い忘れして引き返す鉦叩