自選句

平成20年1〜3月掲載】  


<平成20年3月掲載>

「平成20年2月投句より」  

由紀子 街中に赤きランタン寒明くる 節子 ハングルの文字流れくる春の浜
四温なる画廊喫茶の水彩画 枕木の間まばらに下萌ゆる
冴返る風吹き溜る古墳穴 行きずりの人と見上げる春の虹
光子 下萌ゆるふと人泊めて話したく 真理子 ひとすじの煙苫屋に下萌ゆる
冬鴎浮かぶも飛ぶも自在にて 立春の虹つき抜けて汽車のくる
アルバムを繰る手を止めし春の雪 近づきし所にはなく梅香る
聖子 春隣大いなる虹立ちにけり 佳与子 東京に集う約束春隣
段々に声の高まる鬼やらい 直球もカーブもありぬ年の豆
叡山の見え隠れして雪しぐれ 犬ふぐりどちらが好きときかれても

<平成20年2月掲載>

 「平成20年1月投句より」 
 

佳与子 二組の梅の先客茶屋床几 聖子 静謐と云うべき雪の朝かな
引き当てし大熊笹に人寄り来 寒灯や山仄青く光りけり
講を聞く畳たたきて煤払ひ 寒卵炊き立ての白飯あれば良し
由紀子 初恵比寿袋に入らぬ大当り 節子 口上に佇つ曳猿の浮かぬ顔
太刀打ちのできぬ俳論梅探る 気の乗らぬままに曳猿宙返り
皆カメラ向けし冬日の白牡丹 抱っこされ猿回し見る犬もいて
光子 無職とはなりし朝の寒卵 真理子 誰が捨てし井原西鶴読み初むる
福引の声の祝詞の重なりて のら犬か乳ぶさ垂らして冴え返る
ひょうたんのお守りも古る梅探る 寒卵ひとつふたつを借りもして

<平成20年1月掲載>

「平成19年12月投句より」  

真理子 桟橋の北風に寄り合い船を待つ 光子 戸の閉まる音空耳か冬館
極月の昼の号砲海峡に 冬鳥のしきり陶工窯を開け
壇ノ浦冬の漁船小旗立て 航路指す灯の点滅も冬の海
佳与子 暮早し宿へのバスに乗り遅れ 聖子 墓碑銘も幽かとなりて散紅葉
寒風に干上がる鮫の音たてて 凍て星の光降り来る我が掌にも
寒風に干されし鮫の眼の光 大根の端端しきを歯に当てむ
由紀子 冬日濃し長府城下の骨董屋 節子 本州へ小船で渡る年忘
枯芝に影の伸びゆく風見鶏 竹爆ぜる音して社年用意
転職の娘の落ち着きし年を守る 九州へ帰る渡船の古暦

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