自選句

【平成20年4〜6月掲載】


平成20年6月掲載>

「平成20年5月投句」より  

節子 上下線同時発車の遍路駅 由紀子 賽銭の苔にこぼれてシャガの花
幸せは大山蓮華の花の中 初夏の日差し寝釈迦の足裏に
まっすぐに天を目指して麦熟るる 山越えの道広くなり遍路宿
真理子 過ぎしこと再び夢に明易し 光子 取材慣れせし女将出て夏蕨
さくらんぼ啄ばむ雀入れ替わり 鍛冶の研ぐ刃先の光り夏に入る
山中に施設静もる桐の花 念仏を五月の山に唱えけり
佳与子 この辺りケーブル交差夏蕨 聖子 母の日や気遣ひさるる身となりて
まくなぎの煙のごとく湧き上がり 名物の大筍にかぶりつき
三つほど小橋くぐりて夏燕 薫風やきりりと晴れし由布の山

平成20年5月掲載>

「平成20年4月投句」より  

聖子 車窓より見し夜桜の晧晧と 佳与子 バス降りてすぐに公園風光る
マラソンに蜂乱入のニュースあり チューリップ赤より白の咲きそうな
春愁や一つ大きな息をして 身投げする蛍烏賊とや砂浜に
節子 ぼんぼりも屋台も人も花の中 由紀子 シャボン玉吹く子浴びる子花の下
園児らを待つ花屑を掃きながら 足立嶺の稜線ま近花筵
かけ上がるらせん階段花の屑 春風にクロワッサンを焼く匂い
真理子 仰ぎ見て振り返りもし桜狩 光子 蛍烏賊光ると知らず山育ち
引越しのトラック花に荷造れり わずかなる甘味椿の花の芯
からたちの花咲き初めし屋敷町 久女碑に散り初む山の桜かな

平成20年4月掲載>

「平成20年3月投句」より  

光子 豆の花観世音寺の道細く 真理子 漁小屋に声かけてみる春炬燵
一合の白魚売ってもらいけり 白魚の生簀浮きゐる室見川
春の野やパピヨンの尾の真白き いつまでも連れ添う母のお雛様
聖子 草青む河畔に雨の強かりき 佳与子 春風や旅人として今ここに
雨いつか名残の雪となりて降る この路地に師と立話落椿
身籠りし人思ひつつ雛飾る 鵜の嘴の引きあげしもの春の川
節子 葦の角川原遊びはまだ続く 由紀子 人影の動けば散りし柳鮠
慣れた手で魚追い込み葦の角 菜の花の畦に積まれゐる捨菜
白魚の一日上らぬ漁小屋に 営巣の森育てゐる春の雨

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