自選句
【平成21年12月号】 |
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「平成21年11月投句より」  |
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節子 |
由紀子 |
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からすうり山の畑で行き止まり |
庭手入れ冬めく雲に急かされて |
夕映えの西油山薄紅葉 |
磨かれし庫裏の廊下の冷たくて |
美しき人の靴にもいのこづち |
市街地を見下ろす暮らし年木積む |
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真理子 |
光子 |
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樅大樹聳え山寺冬に入る |
炉を開きこれを縫はばやあれを編み |
見送りて膝つく坊の廊下冷え |
二つづゝ短く下げて軒の柿 |
鐘の音を聞かずに下りぬ猪の山 |
通り抜けできざる山の冬菜畑 |
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佳与子 |
聖子 |
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猪掘りし跡とや雨の溜りたる |
炉開きの帰りしのつく雨となり |
どの家もふた棹ほどの柿を干し |
初冬や皇帝ダリア聳え咲く |
猪が出るとは聞いておらざりし |
立冬の思ひの外の日和かな |
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2009Top |
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<平成21年11月掲載> |
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「平成21年10月投句より」 |
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聖子 |
佳与子 |
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秋深し吾が心音を確かめつ |
石垣の隅は手鎌で稲を刈り |
体育の日や口ずさむファンファーレ |
新しき木の香の工房酢を造る |
立ち塞ぐ壁の如くに馬肥ゆる |
門川に小さな暗渠式部の実 |
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節子 |
由紀子 |
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見届けし首の痛さよ鷹柱 |
マネキンと同じコートを試着して |
秋風にのってマイクのテスト中 |
ネクタイをシャツに入れこみおでん酒 |
駅前というも稲田のあるばかり |
秋桜海峡いつも風強し |
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真理子 |
光子 |
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潮の香を吸ひて岬の馬肥ゆる |
編み飾りたるたてがみの馬肥ゆる |
蹇の犬の爪音秋風に |
酔芙蓉山の御社より海へ |
追ふてきし何か過ぎ去る秋の風 |
坂道を自転車押して天高し |
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2009Top |
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<平成21年10月掲載> |
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「平成21年9月投句より」  |
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光子 |
佳与子 |
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爽やかや今日一日を掃除して |
猿の目の冷茶ボトルに注がれて |
香を胸に沁みとおらせて桃をむく |
桜の葉蔭より突如鷹渡り |
我が生を織り成す糸や曼珠沙華 |
見廻りの夜の水田螻蛄鳴いて |
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節子 |
由紀子 |
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待つ人に色づき始む実むらさき |
しま馬の親子首寄す木陰かな |
息つぎにリズムの乱れ鉦叩 |
飛行機の離陸の空に鷹柱 |
水じまい終え邯鄲の声高く |
下巻まだ読み終えぬまま秋燕 |
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真理子 |
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蓮の池どこからか風生まれくる |
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執念の浅き性質なり螻蛄鳴けり |
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一羽見えみささぎなりと誰かいふ |
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2009Top |