<平成17年6月〜8月掲載>   


<9月掲載>

「17年8月投句」より

光子 送り火にかがみて言葉少なかり 節子 もう少し鵲の町に住むことに
日盛りの図書館の窓外は海 口広き花器に鬼灯ばかり入れ
渦という水のうねりや秋の潮 訪ね行く庭に芭蕉のある家を
聖子 小部屋にて天井低き残暑かな 由紀子 サングラス手にし船上レストラン
橋下に住む人ありて赤とんぼ 夏暮れし門司港ホテルベルボーイ

古き家の軒に迫りし芭蕉の葉

寺裏にあるはず蛇口芭蕉林

<8月掲載>

「17年7月投句」より  

由紀子 市街より遠き病院青田風 聖子 遊ぶ子を眺める鴉夏木立
一年や夏炉のロッジなつかしく 青芒小山の如く群生し
追い山の熱気や空に茜さす ナイターの灯の煌々と夜蝉鳴く
光子 町中に青田一枚残されて 節子 炎天の道を犬ゆく爪の音
山小屋に夏炉のはぜる音のして 片陰を歩けば頭一つ出て
締込みをきつく祭の男かな 祭果つ若者詰所縄解かれ

<7月掲載>

「17年6月投句」より  

節子 あっち向きこっち向き沼蛙 光子 菖蒲田に御祓太鼓響き来る
目の前に突然蜘蛛の降りて来し 旅先で買いて忘れし梅雨の傘
一心に小さき枇杷剥く小さな手 たった一日使わぬ竿に蜘蛛のはや
由紀子 急ぎ来し我を阻みし蜘蛛の糸 聖子 緑陰の公衆電話やヽ不気味
緑陰や大注連縄の宮深く 今年竹伸びるがままに基地の夏
八宮の山気満ちたる額の花 夏風邪の女事務員髪乱れ