名句鑑賞
【平成25年10月〜12月号掲載】
 
【平成25年12月掲載】 
 
一茶忌の句会すませて楽屋入   (中村吉右衛門)
     

【小林一茶の住んだ土蔵(長野県信濃町)】
 
一茶は、文政10年(1827)65歳の時、大火で家が焼け、残った土蔵の中で、中風の発作で亡くなった。陰暦11月19日。作者は名優であるとともに虚子門の俳人としてもすぐれ、句会を主宰した。虚子が吉右衛門の頼みで「髪を結ふ一茶」の脚本を書いたことを知ると、この句の味わいは更に深い。 
 
【出典:NHK俳句  深見けん二選 】
 
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【平成25年11月掲載】 
 
どの鹿となく屯より声寒き (皆吉爽雨)    
   
 
 
鹿は、妻恋いに鳴く声から古来秋の季題とされ、茶褐色の地に白い斑点が鮮やか。しかし冬になると斑点が消え一様な灰褐色に変る。この句「雲の低く垂れた草原のあちらこちらに、鹿が屯していた。近づくと鳴声がしたが、どの鹿とも分らぬ低い寒々としたものであった。」の意。あわれが深く詠まれている。 
 
【出典:NHK俳句  深見けん二選】 
 
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 【平成25年10月掲載】
 
拾ひけり更に大きな朴落葉  (森田 峠)  
   
 
 
 
朴の葉は楕円で、四十センチもの長さになりとても大きい。その落葉は、木のまわりだけでなく、山地などでは遠くにまで落ちる。この句、大きな朴落葉だなあと拾ったが、歩いてゆくと、もっと大きなものがあったという意で、いかにも朴落葉らしい。
写生をひたすら進め吟行をしている作者の姿も浮かぶ。 
 
【出典:NHK俳句  深見けん二選】
 
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