名句鑑賞
【平成24年4月〜6月号掲載分】
 
【平成24年6月号掲載】 
  
七夕やくらがりで結ふたばね髪 (村上鬼城)      
 
 
七月七日、牽牛・織女が天の川を渡って逢うという中国の伝説がある。暑い一日の夕方、髪を解いて洗い、それを結い直しているところ。半裸に近い姿での女性の仕種を、暗がりの中で彷彿させる。「七夕や髪ぬれしまま人に逢ふ 橋本多佳子」の姉妹篇か。
『定本鬼城句集』(昭和十五年刊)所収。 
 
【出典:NHK俳壇 雁羽狩行 評】 
 
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【平成24年5月号掲載】 
  
薔薇よりも濡れつつ薔薇を剪りにけり    (原田 青児)  
 
  
 
前の日に降った雨で、花や葉に雫がいっぱい溜まって光っている朝の薔薇園。そこへ入って薔薇を一と花ずつ見定めて剪りとってゆくと、体まで濡れて来る感じがした。それを「薔薇よりも濡れつつ」と詠むことで、伊豆高原に薔薇園を持つ作者ならではの、薔薇への愛情のこもった一句になったと思う。 
 
【出典 NHK俳句   深見けん二 選】
 
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 【平成24年4月号掲載】
  
蛍火やまだ水底の見ゆる水  (福永 耕二)
 
 
「源氏蛍」「平家蛍」の名もあるように、蛍にまつわる伝説は多い。暑い一日が終わって、闇の中を涼しげに飛び交う蛍は神秘的である。「水底の見える水」は澄んだ川である。その川底がまだ透いて見える夕暮れ、ようやく蛍が現れはじめた、微妙な時の感じをとらえて秀抜。
昭和50年作。 
 
【出典 「NHK俳壇」  鷹羽狩行 選】
 
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